善玉コレステロール、実はそれほど善玉でもなかったことが判明

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今回、善玉コレステロールたるHDLコレステロールを増やしたところで、冠動脈疾患や心筋梗塞、脳卒中などリスクを減少することができないという、衝撃の研究結果が報告されました。HDLコレステロールはこれまで考えられてきたほど”善玉”ではなかったのかも知れません。

脂質異常症について

その患者数は予備軍まで含めると二千万人以上にも及ぶと言われている脂質異常症。中高年を中心に発症者の多い病気で、血中のコレステロールや中性脂肪が増えることにより動脈硬化を引き起こし、放置すれば心筋梗塞や脳卒中などの重大な心血管疾患にも直結する恐ろしい病気です。

以前は「高脂血症」、今は「脂質異常症」。そのワケは?

この「脂質異常症」は、少し前までは「高脂血症」と呼ばれていました。血中の脂質であるコレステロールや中性脂肪の数値が高い危険な状態であることを「高脂血症」という病名で表現していたのです。

ところが、血中の脂質であるコレステロールには、LDLコレステロールとHDLコレステロールの2種類が存在し、悪玉であるLDLコレステロール値が高い状態に健康上の問題があることはもちろんですが、善玉であるHDLコレステロール値については、むしろ高い方が良いということが判明しました。

これにより、それまでの単に血中のコレステロールの高値を問題にした「高脂血症」を改め、血中の脂質の異常を表現した「脂質異常症」という病名が使われるようになったわけです。

本当に重要なのは「LH比」

現在では血液検査の結果は、悪玉であるLDLコレステロールの数値と善玉であるHDLコレステロールの数値が区別して明記されているか、簡単な計算により両者の具体的な数値を求めることができるようになっているのが一般的です。

もちろんLDLコレステロールとHDLコレステロールには、それぞれについて基準値が設けられています。その基準値と比較して、悪玉コレステロールが基準値以内におさまっているかどうか?善玉コレステロールが基準値以上あるかどうか?その結果に一喜一憂されている方も少なくないのではないでしょうか。

ところがです。本当に重要なのは、LDLコレステロールとHDLコレステロールの比率だと考えられています。いわゆる「LH比」と呼ばれるもので、計算式で表すと次の通り。

LH比の計算式を表現した図表

このLH比が2.0を超えていると、コレステロールが蓄積傾向にある状態で、2.5以上だと血栓ができている可能性も考えられ、心筋梗塞や脳梗塞などの発症リスクの高い状況だと言えます。

正常値は2.0以下とされていますが、心血管疾患の高リスク者、つまり、高血圧や糖尿病などの持病もっている人、または過去に心筋梗塞などの病歴のある人の場合は、さらに厳しく1.5以下に抑えることが推奨されています。

たとえ基準値内であっても危険な状況もある

ちなみに、脂質異常症の治療が必要とされるコレステロールの数値は次の通りです。

LDL(悪玉)コレステロール値が140mg/dl以上

または、

HDL(善玉)コレステロール値が40mg/dl未満

たとえば悪玉コレステロールの数値が基準値内の 130mg/dl で、善玉コレステロールの数値が 45mg/dl だった場合、個々の数値的にはどちらの基準もクリアしており、脂質異常症としての治療の必要はないと言えます。

しかし、この場合のLH比を計算してみると、 135 ÷ 45 = 3.0 となり、いつ血栓ができてもおかしくはない状況、すなわち心筋梗塞や脳卒中の発症リスクの非常に高い危険な状況だと言えるわけです。

LH比を改善するためには

動脈硬化を予防し、健康な血管を維持して心筋梗塞や脳梗塞などの心血管疾患を防ぐためには、このLH比を改善する必要があります。そのためには「LDL(悪玉)コレステロールを減らす」ことと、「HDL(善玉)コレステロールを増やす」ことの両方が重要だと考えられてきました。

悪玉であるLDLコレステロールを減らすことを目的とした治療薬としては、今やスタチンがその地位を確立していると言えますが、その一方で、善玉であるHDLコレステロールを増やすことを目的とした治療薬については、なかなか臨床試験で有効性が証明できず開発が進んでいないのが現状のようです。

善玉コレステロールの実力を検証

そこで今回、英インペリアル・カレッジ・ロンドンのDaniel Keene氏らの研究チームにより、HDLコレステロール上昇作用が確認されている、以下の3つの脂質異常症治療薬における、冠動脈疾患、心筋梗塞、脳卒中リスクへの影響を確認する比較試験が実施されました。

  • ナイアシン
  • フィブラート系薬
  • コレステロールエステル転送蛋白(CETP)阻害薬

その結果、これら3つの脂質異常症治療薬全てにおいて、HDLコレステロールの上昇は認められたものの、それによる冠動脈疾患、心筋梗塞、脳卒中、全死亡のいずれのリスク減少効果も確認されませんでした

この結果を受けて、研究チームのKeene氏は次のように結論づけられています。

HDL-Cと心血管予後の関連を示唆する「極度に単純化された仮説」を支持する観察研究の結果にもとづき、薬剤でHDL-Cを上昇させれば、心血管イベントは減少するのではないかと考えられてきたが、スタチンが普及した現在、これらの3薬剤に関するRCTの解析からはこれまでのコンセプトを裏付ける結果は得られなかった

但し、HDLコレステロールを増やすことによる心血管疾患リスクの減少については、残念ながら確認できませんでしたが、肥満や運動不足、糖尿病などと同様に、HDLコレステロール値の低いことが、心血管疾患のリスク上昇要因となるとの報告も多数寄せられていることから、依然として”HDLコレステロール低値”は有用な心血管疾患マーカーとしての可能性は残りそうです。

HDLコレステロールはそれほど”善玉”でもなかった?

つまり、善玉コレステロールが少ない状態は、心血管疾患リスクの高い状態だと考えることができるものの、だからと言って善玉コレステロール値を増やしたところで、その心血管疾患リスクを減少させることはできないと言う、なんとも切ない結末になってしまいました。

HDLコレステロールは、実はこれまで考えられてきたほど”善玉”ではなかったのかも知れません。

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Category : 健康・医学の最新情報