脳梗塞の原因にもなる心房細動をオリーブオイルで予防できる可能性

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心房細動は高齢者に多くみられる不整脈の一つですが、老化現象の一つと考えられ、現時点で有効な発症予防策は存在しません。ところが今回、脳梗塞などの重大な疾患にも繋がる心房細動を、オリーブオイルを積極的に摂取することで、有効に予防しうる可能性が出てきたようです。

今回もスペインで実施されたランダム化比較試験「PREDIMED」の後付け解析による研究成果です。「PREDIMED」の概要につきましては、前記事で簡単にまとめておきましたので、そちらを参照していただければと思います。

また、「PREDIMED」を解析した結果、得られた数々の注目すべき研究成果については以下のリンクからどうぞ。管理人の勝手な考察を含めて、できる限り分かりやすく解説したつもりですので。

詳しくは各記事に委ねますが、ランダム化比較試験「PREDIMED」は、あくまでオリーブ油やナッツ類を豊富に摂取する「地中海食」の心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患イベントの初発予防効果を解析することがメインテーマでした。

これを試験終了後に後付けで、サブ的なテーマでもって再解析することにより、2型糖尿病や末梢動脈疾患の予防効果をも確認できたというわけです。ですので、当然にサブ解析の結果の信頼性は、メイン解析には劣ると言わざるを得ません。

オリーブオイルの積極的な摂取で心房細動の発症を抑制

オリーブオイルを積極的に摂取することで、心房細動の発症リスクを38%も抑制したという今回の研究成果も、「PREDIMED」を後付け解析した結果ですので、これまでのサブ解析の結果同様、その分は差っ引いて評価すべきだと言えます。

しかし、何と言っても今回の研究成果は、その発症予防策が現時点では存在していないと言われている心房細動の発症リスクを、食事によって抑制しうる可能性が示されたわけですから、期待せずにはいられません。

まずは今回のトピックスのテーマである心房細動について解説しなければならないのですが、その前に具体的な心臓のはたらきと血液循環の流れを、心臓の構造を簡略化したイメージ図を使って説明してみましょう。

正常な心臓のはたらきと血液循環

心臓はその中に2つの心房と2つの心室という4つの小部屋を有しています。上側にあって心臓に血液を溜め込むための小部屋が”心房”で、下側にあって強力なポンプ機能で血液を送り出す小部屋が”心室”です。

心臓の構造を簡略化して血液循環の流れを説明するイメージ図

全身を巡ってきた古い血液は、一旦心臓の右側(向かって左)上部にある右心房に溜め込まれ①、その血液は右心房の下にある右心室によって、肺へ送り込まれます②。肺で酸素をたっぷりと吸収した新鮮な血液は③、左側(向かって右)上部にある左心房に溜め込まれ④、すぐさまその下にある左心室の強力なポンプ機能によって全身へ送り出されます⑤。

つまり、この心臓の4つの小部屋は、互いに精密に連携しながら規則正しく収縮と弛緩(拡張)をくり返すことで初めて、身体の隅々に常に新鮮な血液を巡らせることができるのです。

心房細動を起こすと…

ところが、心房細動を起こすと、たちまちこの緻密な連携が崩れてしまいます。心房細動とはその名の通り、一旦心臓に血液を溜め込むための小部屋である心房が、規則正しく収縮できずに、細かく震えるように不規則に収縮する状態を言い、一般に多く見られる不整脈の一つです。

心房細動が起きると、心房の中の血液がよどんだ状態となり、血栓と呼ばれる血の塊ができやすくなります。心房の中でできた血栓が心臓から出て、脳の動脈に詰まると脳梗塞を、肺に詰まれば肺梗塞、腸に詰まれば腸管動脈閉塞、腎臓に詰まれば腎梗塞…と言った具合に、血栓が飛んだ身体の各部位で、たちまちのうちに非常に危険な状況を引き起こしてしまいます。

心房細動は、心房筋の老化現象の一つと考えられ、加齢とともに増加する病気ですので、平均寿命の延長に伴って有病率が年々増え続けており、高齢化が進む我が国において最近最も注目されている疾患の一つだと言えましょう。

心血管疾患と心房細動

前述のように、現時点において心房細動の発症予防策は存在しませんが、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患と心房細動には共通する機序が多いことから、心血管疾患の発症予防にオリーブ油やナッツ類をたっぷりと摂る地中海食が有効であるのならば、心房細動の発症予防にも効果があるのではないかと考えられ、今回のサブ解析が実施されました。

比較試験「PREDIMED」で調査対象とされたのは、心血管疾患の高リスク者でしたから、その中から試験開始時点で心房細動を既に発症している参加者を除いた6,705例が、今回のサブ解析の解析対象となりました。

この6,705例が、オリーブオイル群とナッツ群、そして対象群の3群へランダムに割り付けられたわけですが、より具体的な調査対象者の基準や比較のための3群の詳細など、「PREDIMED」の概要についてはリンク先の過去記事を参照していただければと思います。

心房細動の発症リスクがオリーブオイル群で38%低下

その注目すべき解析結果は次の通りです。

追跡期間中央値4.7年におけるAF(※)新規発症数はオリーブ油群で2,292例中72例,ナッツ類群で2,210例中82例,対照群で2,203例中92例。

オリーブ油群では対照群に比べ発症のリスクが38%有意に低下。
〔ハザード比(HR)0.62,95%CI 0.45~0.85,P=0.003〕

ナッツ類群では11%のリスク低下が見られたが有意ではなかった。
(HR 0.89,0.65~1.20,P=0.43)

※ AF:心房細動

つまり、オリーブオイルを積極的に摂取する地中海食を食べていた人達は、オリーブオイルを含む植物油の摂取を、1日にスプーン2杯以下に制限されていた対象群の人たちよりも、試験期間中に心房細動を新規に発症した人の数が38%も少なかったという、注目すべき結果が得られたわけです。

とは言え、ナッツ類のリスク低下率もオリーブオイルには及ばなかったものの、数字上は11%とまずまずの効果が得られているにもかかわらず、「有意な差ではない」とされたことからも分かるように、試験期間中に心房細動を新規に発症した人の絶対数が少なかったという点には注意しなければなりません。

比較試験中の心房細動の発症率は約3.6%

実際に試験期間内に心房細動を新規発症したのは、オリーブオイル群で72例、ナッツ群で82例、対象群で92例と、全対象者 6,705例中、たったの246例と約3.6%ほどだったことになります。とは言え、これは心房細動の発症率を考えると仕方のない数字なのです。

そもそも、比較試験「PREDIMED」の参加者は、55歳から80歳までの人が集められました。これに対して、心房細動は高齢者に多く見られる病気ですので、有病率が顕著に増えてくるのは70歳代以降です。より具体的には70歳代で5%、80歳代で10%、その後は加速度的に増加すると言われています。

年齢別の心房細動有病率を表したグラフ

つまり、心房細動の発症率を調査するのであれば、実際の発症者が激増する80代以降の被験者も調査対象にすべきだと言えますし、心房細動の発症率から考えて、調査期間ももう少し長いスパンで観察すべきだと言えましょう。

また、心房細動は女性よりも男性の発症率の方が1.5倍も高いと言われています。しかし、「PREDIMED」の参加者の男女比率を見てみると、女性が57%と、若干男性の方が少なく、この点も心房細動発症者数の絶対数を下げる要因になったと考えることができます。

もっとも、これらの点に関しては、今回の研究成果はあくまでメインの解析テーマが別にあって、これを後付けでサブ的に解析した結果に過ぎないため、仕方のないことと言わざるを得ません。

より心房細動の発症リスクの高い被験者での再調査に期待

これから超高齢化社会を迎える我が国にあって、心房細動の患者数は2010年の約80万人から、2030年には100万人を突破するとも予想されています。オリーブオイルの積極摂取で、この心房細動を予防しうる可能性が示された今回の研究成果の意議は大きいと言えます。

このオリーブオイルが持つ注目すべき効果に大いに期待したいところではあるのですが、前述の通りデータ不足である側面も否めず、今後さらに、前述のような心房細動の発症率の特徴を考慮して、より心房細動の発症リスクの高い被験者を集めた上で、4年や5年といった期間ではなく、より長いスパンで再調査されることが期待されます。

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Category : オリーブオイルの健康効果