オリーブ油とナッツ豊富な地中海食で末梢動脈疾患を予防する

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オリーブオイルやナッツ類をたっぷり摂取する地中海食で、動脈硬化などを原因として発症する末梢動脈疾患(PAD)の発症リスクを、大きく抑える可能性が確認されました。特にオリーブ油を積極摂取した場合、なんと64%ものPADの発症率の低下が認められたようです。

オリーブオイルやナッツ類を豊富に摂取する「地中海食」。この地中海食が持つ様々な健康効果を確認するために、スペインで大規模な比較試験が実施されました。本サイトでは、その注目すべき研究結果について、これまで2度に渡って取り上げてきました。

実は今回のトピックスも、その比較試験を後付けで解析した結果ですので、まずは比較試験の概要を押さえるためにも、前2記事の内容について簡単に復習しておこうと思います。

スペインで行われた比較試験「PREDIMED」の概要

スペインで実施されたランダム比較試験「PREDIMED」は、心血管疾患の既往はないものの、糖尿病や高血圧、肥満、高脂血症、喫煙習慣などの心血管疾患の危険因子のうち、3つ以上を有している高リスク者を対象としていました。

登録された55歳~80歳の全7,447例を、さらに以下の3群にランダムに割り付けて…

  • オリーブオイル群 (※1)
  • ナッツ群 (※2)
  • 対象群(脂質制限群 )(※3)

(※1) 1日に50ml相当のオリーブオイル(エキストラバージンオリーブ油)の摂取を目標とする群。
(※2) 1日にウォルナッツを15g、アーモンドを7.5g、ヘーゼルナッツを7.5gの摂取を目標とする群。
(※3) オリーブオイル群とナッツ群に対する対照群。具体的にはオリーブオイルを含む植物油の摂取を、1日にスプーン2杯以下に制限した脂質制限群。

約5年に渡る追跡調査の結果、次のような2つの研究成果が得られました。ここでは簡単に結論のみご紹介しておきます。

オリーブオイルとナッツが初めての心筋梗塞や脳卒中を30%減少

まずは、この比較試験のメインテーマである、オリーブオイルやナッツ類の初発心血管イベントの抑制効果から。

調査の結果、オリーブオイル群に割り当てられた人が、心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントを初めて発症したり、それが原因で死亡に至った人数は、対照群に比べて30%も少ないという結果が出ました。

また、ナッツ群に割り当てられた人も、オリーブオイル群にはわずかに及ばなかったものの、対象群に比べて28%も少なかったという高い効果が確認されました。

オリーブオイルの積極摂取で2型糖尿病の発症リスクが40%減少

次に、この比較試験のサブテーマである、オリーブオイルの2型糖尿病の新規発症予防効果について。

もちろん対象となったのは心血管疾患の高リスク者ですが、この解析においては、試験開始当時、既に糖尿病を発症している人は除かれました。

約4年に渡る追跡期間中に、2型糖尿病を新規に発症した被験者数を比べてみたところ、オリーブオイルを毎日積極的に摂取していたオリーブオイル群は、対照群に比べると、なんと約40%も少なかったという驚くべき結果が出たのです。

以上、前2記事の研究成果の概要について簡単におさらいしてみました。30%や40%という数字だけを見れば、オリーブオイルやナッツ類の顕著な健康効果に驚かされるばかりですが、この2つの研究成果には、いくつか気になる点もありました。より詳しい考察についてはは、それぞれの記事を参照していただければと思います。

地中海食が末梢動脈疾患リスクを減らす可能性を確認!

前置きが大変長くなってしまいましたが、いよいよここからが今回のトピックスです。前2記事の解析の元になったランダム化比較試験「PREDIMED」には、さらにもう一つ、後付けではありますが、オリーブオイルやナッツ類の積極摂取と末梢動脈疾患との関連性を検討したサブ解析もなされました。

末梢動脈疾患とは?

全身に張り巡らされた動脈の中でも、主に身体の末端である手足に血液を届ける動脈を「末梢動脈」と言います。末梢動脈疾患(PAD)とは、足や手に血液を届ける重要な動脈が、動脈硬化などを原因として狭くなったり詰まったりして、血液の流れが悪くなり、足や手に様々な症状を引き起こす病気です。

その具体的な症状は、しびれや痛みがあったり、歩きにくくなる(太ももやふくらはぎの痛みから歩き続けることが難しくなる)と言ったものが代表的なものですが、ひどくなれば皮膚潰瘍ができたり、さらに悪化すると壊死することも…

心血管疾患の高リスク者が対象となった今回の比較試験において、この末梢動脈疾患(PAD)の新規発症率も解析対象とされたことでもわかるように、この末梢動脈疾患は、同じく動脈硬化を原因とする狭心症や心筋梗塞、脳卒中などの心血管疾患を合併するケースが多いので注意が必要です。

ちなみに、この解析で対象となった被験者は、同試験に参加した男女のうち、試験開始時に既に末梢動脈疾患や心血管疾患を発症していない人達です。すなわち、心血管疾患のリスク因子を複数有する高リスク者ではあるけれど、まだ末梢動脈疾患や心血管疾患とは診断されていない人達を対象に、後付け解析がなされたわけですね。

その注目すべき解析結果は次の通り。

各種関連因子を調整後、対照群に対するオリーブ油+地中海食群のハザード比(AHR)は0.36(95%CI 0.21~0.65)、ナッツ類+地中海食群のAHRは0.54(同0.32~0.92)といずれも低下していた。

つまり、オリーブオイルを積極的に摂取する地中海食を食べていた人達は、オリーブオイルを含む植物油の摂取を、1日にスプーン2杯以下に制限されていた脂質制限群(対象群)と比べると、末梢動脈疾患を新規に発症した人数が、なんと64%も少なかったという驚きの結果が出たわけです。

また、ナッツ類を積極的に摂取する地中海食を食べていた群も、オリーブオイル群には及ばなかったものの、対象群に比べると46%も発症率を抑制していたという高い効果が確認されました。

あくまで後付け解析で、事前に設定された評価項目ではありませんでしたが、食事による介入が末梢動脈疾患の発症リスクを抑制する可能性を、大規模なランダム化初発予防試験で示されたのは初めてなのだそうです。

但し、今回の比較試験において末梢動脈疾患の初発発症例は全体でも89例と少なかったことから、結論を出すに十分なデータが得られたとは言えず、地中海食の末梢動脈疾患発症リスクに対する有効性を証明するためには、末梢動脈疾患をあらかじめ評価項目に含んだランダム化比較試験を実施する必要があるようです。

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Category : オリーブオイルの健康効果