カルシウムのサプリメントを摂取してる方への警告

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近年、サプリメントによるカルシウムの高用量摂取が、心筋梗塞脳卒中の発症リスクを高めるとの報告が相次いで寄せられていることをご存じですか?主要な研究報告の概要をまとめ、特に注意すべき人、より安全なカルシウムの補給方法などについて考えてみました。

数年前から議論されているトピックスなのですが、まだ意外と知られていないようなので警告の意味を込めて・・・

いくつかの主要な論文をリストアップして、その概要を一つ一つご紹介しているので少々長くなってしまいました。今回のトピックスにおいて特に注意すべき人はどんな人か?より安全なカルシウムの補給方法などについて、サプリメントマニュアルの結論のみ知りたい方は「で、結局どうなの?サプリメントマニュアルの結論」へどうぞ。

カルシウム摂取の重要性について

現在、健康増進のためにカルシウムのサプリメントや健康食品を摂取されている方は少なくないのではないでしょうか。また、骨粗しょう症や骨折予防のためにと医療機関でカルシウムが処方されているケースも相当数に上ると思われます。

カルシウム摂取量と血中ビタミンD濃度がともに低い場合、骨密度が低くなり、既存骨折が多いという結果が出ており、さらにカルシウム摂取量が少ないと骨折だけでなく、動脈硬化の発症リスクが高くなる可能性もあります。

また、骨を形成する骨細胞が免疫臓器や脂肪組織をコントロールして全身の健康に影響を与えていることも明らかになっています。つまり、カルシウムの摂取は、単に骨粗しょう症や骨折予防のためだけでなく、免疫不全や脂質代謝疾患の根本的治療のためにも重要なのです。

さらに、これらのトピックスをはじめとして、以前よりカルシウムの摂取不足が高血圧や糖尿病、肥満など、様々な生活習慣病の発症リスクを高める原因になっている可能性を示唆する報告が多数寄せられていました。

サプリメントによるカルシウムの高用量摂取が危ない!

ところがです。

数年前より、カルシウムの摂取、特にサプリメントなどを利用した高用量摂取が、心筋梗塞脳卒中などの発症リスクを高める可能性を指摘する報告が相次いでいるのです。まずは、主要な信頼すべき研究報告と、その概要をリストアップしてみます。

カルシウムサプリメントが心筋梗塞リスク増加と関連

特に健康な高齢女性において、サプリメントによるカルシウムの積極摂取が心筋梗塞と心血管イベントの発生率を増加させる可能性を示唆した研究報告です。

カルシウムのサプリメント(ビタミンDの併用なし)の影響をプラセボ(偽薬)群と比較した結果、カルシウムのサプリメントを摂取していた群で、心筋梗塞リスクが約30%も上昇していたという驚くべき結果が出たのだとか。

ちなみに、食事から摂取したカルシウムと心血管リスクとの間には関連性は認められませんでした。 [2011.01.27]

Caサプリメント摂取で心疾患リスク上昇/血中のCa濃度の急激な変化が関係か

カルシウム サプリメントの摂取により心血管イベント(心筋梗塞や脳卒中など)リスクが上昇するとの研究報告です。ちなみに、この研究結果はビタミンD併用の有無とは無関係でした。

リスク上昇には、摂取したカルシウムの総量ではなく、カルシウムのサプリメント服用開始による血中のカルシウム濃度の急激な変化が関係しているとの考察が示されています。 [2011.09.01]

Caサプリメント使用で心筋梗塞リスク2倍に

心血管疾患の既往者を除く、35~64歳の2万3,980人の被験者を対象に、平均11年間追跡したデータを分析した結果、カルシウム サプリメントの使用は心筋梗塞リスクを約2倍と大幅に上昇させていたという研究報告です。

カルシウムのサプリメントにより、血中カルシウム濃度の急激な上昇が、血管の石灰化を招き、それが心筋梗塞の発症リスクを上昇させているのではないかとの考察が示されています。ちなみに血中カルシウム濃度は、心筋梗塞などの心血管疾患の幾つかのバイオマーカー(指標となるリスク要因)との関連も報告されています。 [2012.05.28]

長期的な高用量Ca摂取で全死亡リスク1.4倍/スウェーデン人女性6万人を19年追跡

スウェーデン女性約6万人をおよそ19年の長期に渡って追跡し、摂取量別に長期的なカルシウム摂取(食事およびサプリメント)と全死亡リスク、心血管疾患や脳卒中による死亡リスクなどとの関連について検討された研究報告です。

その結果、食事による通常摂取に比べて、サプリメントなどを利用した高用量摂取では全死亡リスクが1.4倍の上昇を示したとの結果が報告されています。 [2013.02.14]

骨折予防でのビタミンD・Ca摂取推奨せず、米勧告が改訂/骨粗鬆症・ビタミンD欠乏症の患者には非適応

米国予防医療サービス委員会(USPSTF)が、「成人における骨折予防のためのビタミンDおよびカルシウム(Ca)のサプリメント摂取」についての勧告をアップデートした旨を取り上げた記事です。

骨粗しょう症やビタミンD欠乏症の治療目的によるカルシウムの処方はやむを得ないが、介護付き住居や高齢者福祉施設などに入っていない、在宅の閉経後女性に対しては、単に骨折予防などを目的として1日400IU以上のビタミンDおよび1,000mg以上のカルシウムの処方は、現状ではすべきでないとする勧告を表明したものです。 [2013.02.26]

ちなみに、米国骨代謝学会(ASBMR)は、このUSPSTFの新勧告に対して、次のような異議ありとする緊急声明を発表しています。

健康な成人においては骨の健康を目的にこれらのサプリメントを摂取する必要はないかもしれないが、骨折リスクの高い高齢者においては必要性がある

健康な成人においては、食事摂取によりCaおよびビタミン類の推奨摂取量に達していない場合の最後の手段として、サプリメントによる摂取を考慮すべき。

Caサプリメントの高用量摂取が男性の心血管疾患死リスク上昇と関連

50~71歳の男女38万8,229人を対象として、食事およびサプリメントからのカルシウム摂取と、心血管疾患、心疾患、脳血管疾患による死亡率との関連性を検討した研究報告です。

平均12年に渡って追跡した結果、サプリメントからのカルシウムの高用量摂取は男性の心血管疾患死亡率の上昇と関連するが、女性ではこの関連は認められず、また、食事からのカルシウム高用量摂取は男女とも心血管疾患死亡率との関連は認められなかったのだとか。 [2013.03.28]

これまでのカルシウムサプリメントに関する報告は、主として閉経後の高齢女性における危険性を危惧するものが多かっただけに、男性の心血管疾患死リスクを指摘するこの研究報告は特異性があると言えますね。

また、この報告は以下のように結ばれています。

当面は低脂肪の乳製品や豆類、緑黄野菜といったCaを豊富に含む食品を摂取することが、Caサプリメントの代替品として安全である。

これらの食品にはCaだけでなく、必須ミネラルやビタミンも含まれている。このような乳製品以外のCa源には、付加的な健康便益もあり、最近では、糖尿病患者の血糖管理も改善すると報告されている。

“多ければ多いほど良い”といった考え方は、Caサプリメントに関する限り破綻している

とは言え、検証はまだ不十分との声も…

以上、これまでに発表されている、サプリメントなどによるカルシウムの高用量摂取が心筋梗塞や脳卒中などのリスクを上昇する可能性を示唆する研究成果をリストアップし、その概要を見てきたわけですが、いずれの報告においても共通している点は、まだ十分なエビデンスが揃っていないことです。

さらなる大規模かつ長期的な検証が待たれるところではありますが、最後にサプリメントマニュアルとしての一応の結論を出しておくことにします。

で、結局どうなの?サプリメントマニュアルの結論

米国予防医療サービス委員会(USPSTF)の勧告通り、骨粗しょう症やビタミンD欠乏症の治療を目的として、カルシウムのサプリメントを摂取せざるを得ない場合があることは否定できません。

ただし、少なくとも心筋梗塞や脳卒中など心血管疾患のリスクが高い人(※)は、サプリメントによるカルシウムの高用量摂取は慎重であるべきであり、摂取する場合には、当然、心血管系へ及ぼす影響について、常にチェックを怠らないことが重要であると考えます。

※心血管疾患のリスク要因には、高血圧、高脂血症、肥満、糖尿病、心房細動などがあります。生活習慣としては、喫煙、過度の飲酒など。

もちろん骨折予防目的のためにとりあえず…だとか、単にカルシウムが体に良さそうだとか、そう言った理由でカルシウムのサプリメントを長期的に摂取し続けることは、エビデンスが揃っていない現段階ではおすすめすることはできません。

カルシウムの補給は食事で!があくまで基本

あくまでカルシウムの補給は日常の食事から摂取することを考えたいですね。上記に挙げた研究成果を読んでいただけるとわかりますが、サプリメントからではなく、日常の食事からカルシウムを通常摂取する場合は、リスクが認められないとの結果も出ていますので。

ビタミンDを活用する手も

でも、どうしてもサプリメントの力を借りたいと言うのであれば、カルシウムのサプリメントの代わりにビタミンDのサプリメントを摂取してみてはいかがでしょう。ビタミンDの作用によりカルシウムの吸収率がアップしますが、カルシウムのサプリメント摂取時のように血中のカルシウム濃度の急激な上昇はないので、その点だけでも安心だと言えますから。

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Category : サプリに関する最新報告