ピロリ菌検査の誤判定が1%以下に!日本人にマッチした検査薬を開発

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ピロリ菌の検査薬は従来、欧米人と同じものが使用されてきましたが、今回、日本人のピロリ菌にマッチした、より精度の高い検査薬の開発に成功しました!これにより誤判定の確率を従来の4~5%から、たったの1%以下に抑えたとの素晴らしい結果も出ているようです。

そもそもピロリ菌に感染したらどうなるの?

今やピロリ菌と言えば、”胃がんの原因”としての側面が大きくクローズアップされていますが、ピロリ菌の感染による弊害には、胃がんだけでなく様々な疾患のリスクが挙げられます。

胃潰瘍や十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎、MALTリンパ腫などの胃や十二指腸の局部的な疾患の原因となるだけでなく、近年の研究により、動脈硬化や鉄欠乏性貧血、じん麻疹、血小板減少性紫斑病などの全身性疾患の発症にも、ピロリ菌が関与していることが明らかになっています。

なお、ピロリ菌の感染が胃粘膜の炎症を引き起こし、やがてそれが胃粘膜の萎縮に繋がり、遂には胃がんに至るという一般的なプロセスを、以下の別記事にて詳しく解説してみました。

ピロリ菌が胃がんを引き起こすプロセスを図解でわかりやすく解説

よりイメージしやすいように図解を用いて丁寧に説明したつもりですので、この機会に参照していただければ嬉しいです。

ピロリ菌の検査法について

ピロリ菌に感染しているかどうかを確認する検査には、大きく分けて内視鏡を使う検査法と、内視鏡を使わない検査法があります。まずはそのそれぞれの特徴を見ていくことにしましょう。

内視鏡検査と誤判定の可能性

内視鏡を使う検査法は、内視鏡を使って実際に胃粘膜の一部を採取し、その組織を数日間培養したり、特殊な反応液を添加したり、特殊な染色をすることによりピロリ菌の有無を直接確認する検査方法です。

しかし、この内視鏡を使う検査法は、広い胃の中から採取した一部の組織に基づいて判定を行うことから、どうしても誤判定(本当は陽性であるにもかかわらず陰性と判定されてしまうこと)が生じる可能性があると言えます。

内視鏡を使わない検査法は胃全体を対象とする面診断

これに対して、内視鏡を使わない検査法は、ピロリ菌に特有な酵素やピロリ菌に対する抗体といった、言わばピロリ菌が体内に存在する”痕跡”を追跡するものです。内視鏡検査が胃の一部分の粘膜組織に基づいて診断する「点診断」であるのに対して、内視鏡を使わない検査法は胃全体を診断する「面診断」と呼ばれています。

ピロリ菌検査の点診断と面診断の違いに関する解説図

内視鏡を使わない検査法

さらに内視鏡を使わない検査法には、大別すると尿素呼気試験法糞便中抗原測定法抗体測定法があります。今回のトピックスは抗体測定法に関するものなのですが、まずはそのそれぞれの特徴を見ていくことにします。

尿素呼気試験法(呼気テスト)

ピロリ菌が”ウレアーゼ”という尿素を分解する酵素を持っていることに着目した検査法です。

尿素はアンモニアと二酸化炭素に分解されますが、”ある印”をつけた尿素を検査薬として患者に服用させると、ピロリ菌に感染している場合にのみ、それが分解され、呼気(吐く息)の中に、その”印”の残った二酸化炭素が検出されるという仕組み。

この尿素呼気試験法は、患者への負担も少ない上に、最も精度の高い診断法ですので、ピロリ菌の感染診断前と除菌治療後に行われる除菌判定検査に推奨されています。

糞便中抗原測定法

糞便の中に排泄されたピロリ菌の有無を調べる方法です。

この糞便中抗原測定法は、少量の糞便だけで検査ができ、検体(便)の採取が容易ですし、尿素呼気試験法には及びませんが偽反応がでる確率も低く、感度と特異性に優れている検査方法です。

検査薬を服用したり、一定時間決められた姿勢を保つ必要のある尿素呼気試験法の実施が難しい、幼児などを対象とする検査に向いている検査法であると言えます。

ちなみに、前記事でご紹介した自宅にいながらにして簡単にピロリ菌感染の有無が確認できるピロリ菌検査キットは、この糞便中抗原測定によるものです。

抗体測定法

ヒトはピロリ菌に感染すると、身体の防御システムによりピロリ菌に対抗するための抗体を作り、ピロリ菌を攻撃しようとします。血液中や尿中などに存在するこの抗体の有無を調べ、ピロリ菌に感染しているか否かを判定する検査方法が抗体測定法(血中抗体測定法、尿中抗体測定法)です。

そして、今回のピロリ菌検査の精度をグッと高めることになった、新しい検査薬の開発に関するトピックスは、まさにこの血中抗体測定法に関するものです。以降、この血中抗体測定法についてより詳しく見ていくことにしましょう。

血中抗体測定法に使われる検査薬について

血中抗体測定法においては、ピロリ菌に感染しているかどうかは、血中に存在する抗体の存否で判定するわけですが、その判定には実際のピロリ菌の細胞から作った検査薬により行われます。

ところが検査薬の元となるピロリ菌には、遺伝子の違いによって様々なタイプがあり、特に人種によって感染しやすいピロリ菌のタイプに違いがあることなども分かっていました。

それにも関わらず、これまで我々日本人のピロリ菌検査においても、検査薬は主に欧米人のピロリ菌を元に作られたものが使われていました。つまり、欧米人に広く感染しているピロリ菌に特化した検査薬が使われていたわけです。

その結果、偽陰性の確率…つまり、陽性(ピロリ菌に感染している)であるにもかかわらず、陰性(感染していない)と判定される確率は4~5%もあったと言われています。

日本人のピロリ菌にマッチした新しい検査薬の開発に成功!

ところが今回、岡山大学保健学研究科検査技術科学の横田憲治准教授らの研究チームにより、日本人が感染する8割~9割という大部分を占めるタイプのピロリ菌を使った検査薬が、新たに開発されました。

つまり日本人が感染しやすいピロリ菌に特化した検査薬が開発されたわけですから、当然、この検査薬を使うことで、従来よりも高い精度でピロリ菌を検出することが可能となります。実際にも…

約200人の血液で調べた結果、誤判定を全体の1%以下に抑えられた。

との素晴らしい結果も得られているようです。

ピロリ菌検査における従来の検査薬と新しい検査薬の検査精度を比較した図

ちなみに、この新しい検査薬は既に厚生労働省の承認を受けているとのこと。これまで4~5%と少なからずあった誤判定によるリスクを、たったの1%以下に大きく引き下げることができるわけで、これによってピロリ菌検査の有用性がさらにアップすると言えましょう。

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Category : 胃痛・胃の不快感・胸焼け