変形性関節症の新治療法に期待!皮膚から軟骨細胞を作ることに成功

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ヒトの皮膚細胞に3つの遺伝子を組み込むことによって、皮膚細胞を軟骨細胞に直接変化させることに成功しました。初期化していない分、その作製期間はiPS細胞の約半分と短く、再生医療への応用や、変形性関節症などの新しい治療法の開発に期待されています。

この研究成果は京都大iPS細胞研究所の妻木範行教授らのチームによるもので、チームは2011年の段階で、同様の手法でマウスを使っての軟骨細胞の作製に成功していましたが、今回はその研究をさらに推し進め、遂にヒトへの応用に成功したわけです。

iPS細胞とどう違うの?

そもそもヒトiPS細胞とは、ヒトから採取した皮膚細胞などに4つの遺伝子を導入することによって(※)細胞を初期化し、数週間培養することによって、そこから様々な組織や器官の細胞に分化し、かつ、無限に増殖しうる能力を有する幹細胞を言います。

(※) iPS細胞の作製に世界で始めて成功した京都大学の山中伸弥教授によるiPS細胞の作製手法で、現在では他の手法による成功例も報告されています。

今回の研究では、その4つの遺伝子のうちの2つの遺伝子と、軟骨細胞の作製に必要な1つの遺伝子の、合計3つの遺伝子を導入することによって、皮膚細胞を初期化することなく、軟骨細胞の特徴を有する細胞に直接変化させることに成功したということです。

iPS細胞を使って軟骨細胞を作製した場合、皮膚細胞を一旦初期化し、あらためて適正な軟骨細胞へと分化するように導く必要があるため、約4ヶ月もの作製期間が必要になりますが、今回は皮膚細胞から直接、軟骨様細胞に変化させることにより、その半分ほどの短い期間で作製することができたわけです。

残る”がん化”の課題と今後の展望

但し、これは一般的なiPS細胞にも同じことが言えるのですが、がん化に影響を与える遺伝子を使用していること、遺伝子の導入のためにウイルスを利用していることなどの原因で、今回の研究成果にもがん化の問題が存在しています。その点に関して妻木教授は次のように述べられています。

「今後の研究課題として遺伝子以外の化合物を使うなどの方法で軟骨細胞を作製したい。この化合物を患部に投与することで治療できる可能性が出てくる」

軟骨再生医療という点では、「iPS細胞ストック」を利用して軟骨細胞を調達することも可能ですが、この場合にはコスト面でのメリットがある一方で、あくまで患者とは異なる遺伝子をもつ軟骨細胞が移植されるため、どうしても拒絶反応などのリスクを検討する必要があります。

今回の研究成果を基に、もしも化合物を利用しての軟骨細胞の作製が実現すれば、患者の皮膚細胞からがん化の心配のない高純度の軟骨細胞を供給する”新たな手段”が増えることを意味しています。これは別の研究ですが、既に遺伝子を一切使わずに化合物だけを使ってのiPS細胞の作製に成功したとの報告もありますので、そう遠い未来の話ではないのかも知れません。

変形性関節症の新しい治療法が確立する可能性も!

また、関節軟骨が損傷すると一部が線維軟骨に置き換わることによりその機能が失われてしまいます。今回のトピックスを説明するに当たり、「”皮膚細胞”を軟骨細胞に変化させた。」と単純に表現しましたが、より厳密には「”皮膚線維芽細胞”を”線維化していない正常な軟骨の性質を有する細胞”に変化させることに成功した。」と表現することもできます。

つまり、線維化して本来の機能を失ってしまった細胞を、正常な軟骨細胞に変えうる可能性が示されたわけです。今回の研究ではそのために3つの遺伝子が使われましたが、さらなる研究が進み、遺伝子を使わず化合物でこれが可能になれば、その化合物を直接患部に注射することにより、線維化してしまった軟骨細胞を、再び正常な軟骨細胞に再生するという、これまでとは全く異なる変形性関節症の新しい治療法が確立するかも知れません。今後のさらなる研究に期待しましょう!

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Category : 健康・医学の最新情報