アルツハイマー病を多角的に攻略!先日発表された2つの研究成果

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先日、アルツハイマー病の予防や治療に関して2つの素晴らしい研究成果が相次いで発表されました。どちらもアミロイドベータに着目した研究ですが、そのアプローチは全く異なるもの。アルツハイマー病発症のプロセスからこの2つの研究成果をわかりやすく解説しています。

アルツハイマー病とは

アルツハイマー病は認知機能の低下、思考や行動などの人格の変化を主たる症状とする認知症の一種で、日本では最も多いタイプの認知症です。アルツハイマー型認知症の症状は時の経過とともに進行し、最終的には死をもたらします。近年、治療薬の開発によって薬物治療が主に行われ、病状の進行を遅らせることが可能になりましたが、残念ながらいまだ根本的治療法は見つかっていません。

アルツハイマー病発症のプロセス

アルツハイマー病の予防や治療の鍵を握るのが「アミロイドベータアミロイドβ)」と呼ばれる脳の老廃物だと考えられています。と言うのも、このアミロイドベータが脳内に蓄積し、凝集すればするほど、アルツハイマー病が進行することがわかっているからです。

もっともこのアミロイドベータそのものには害がありません。アミロイドベータが2つ以上結合することで初めて脳の神経細胞に対して毒性を発揮します。結合したアミロイドベータが神経細胞の周りに集まると、その毒性によって神経細胞が破壊されてしまったり、破壊されないまでも神経細胞内にある”タウ”と呼ばれるタンパク質を変化させ、それらが神経細胞の内部で凝集し、沈着します。これにより脳の神経細胞は次々に死滅していくことになり、やがてアルツハイマー病の発症に繋がっていきます。

今回相次いで発表された2つの素晴らしい研究成果は、まさにこのアルツハイマー病発症プロセスにおけるアミロイドベータの関与に着目したものと言えます。それでは具体的に2つの研究成果を順次詳しく見ていくことにしましょう。

研究成果1:アミロイドベータの生成自体を抑える!

まずは一つ目の研究成果。同志社大学の舟本聡准教授らの研究チームによって、このアミロイドベータの生成自体を抑える新たな物質が開発されたというトピックスから。

チームはまず、アルツハイマー病発症の引き金になるアミロイドベータの生成に関わる酵素に着目し、この酵素の働きを抑制することでアルツハイマー病を予防、あるいは治療することができるのではないかと考えました。

ところが、これらのアミロイドベータの生成に関わる酵素は、体内の他の場所でも重要な役割を担っており、もしもその酵素の働きを抑制してしまうと、例えば皮膚がんの発症など様々な重大な副作用を起こしてしまうことが明らかになりました。

酵素の働きはそのままに、タンパク質との結合だけを阻害

そこで、この酵素からアミロイドベータが生成される詳しいメカニズムを調べた結果、この酵素はアミロイドベータを生成する過程でC99というタンパク質と結合していることがわかりました。そしてさらに研究を進め、酵素の働きを損なうことなく、C99というタンパク質との結合だけを阻害することのできる物質の開発に見事成功したのだそうです。

実際、その開発した物質はマウス実験で、脳内のアミロイドベータの生成を約2割も減少させることに成功しており、副作用の少ないアルツハイマー病の予防や治療法の開発に大いに期待されています。

via. http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20131011133929724

研究成果2:アミロイドベータの毒性から神経細胞を保護する成分を発見!

二つ目の研究成果は、アミロイドベータの生成が避けられないものであるならば、アミロイドベータの毒性から、脳神経細胞を保護してやろう!というトピックスです。

東京工科大 応用生物学部の鈴木郁郎助教らの研究チームは、中東では健康食として知られている「ニゲラサチバ」の種子油に含まれる「チモキノン」という成分に、アミロイドベータの毒性から神経細胞を保護する作用があることを発見しました。具体的な検証実験は次の通り。

アルツハイマー病の最重要領域である海馬および大脳皮質の2次元回路モデルに、最も毒性の高いアミロイドβ1-42とチモキノンを同時投与。その結果、アミロイドβ1-42のみの投与に比べて有意に細胞死を防ぎ、活性酸素の発生量の軽減とミトコンドリア膜電位の減少などの細胞毒性を抑制する効果を確認したという。

また、チモキノンには脳内にある140億個もの神経細胞を結びつけ、情報を受け渡しするためのシナプス機能、及び神経活動が、アミロイドベータの毒性によって低下することを大きく抑制する効果も認められました。

より具体的には、アミロイドベータを投与する前のシナプス機能を100%とすると、アミロイドベータのみが投与された場合のシナプス機能は50%程度に半減してしまいます。これに対して、アミロイドベータとチモキノンを同時投与した場合は、毒性の高いアミロイドベータが投与されているにもかかわらず、そのシナプス機能は、アミロイドベータ投与前の機能水準の90%程度と高い水準に留まったのだとか。

つまり、チモキノンはアミロイドベータの毒性による脳内の神経細胞を保護し、単に細胞死を防ぐだけでなく、神経細胞の神経活動やシナプス機能が低下するのを大きく軽減することが、この実験により明らかになったわけですね。

人類が抱える長年の大問題に様々な角度からメス

1つ目のトピックスは、アルツハイマー病発症の引き金となるアミロイドベータの生成そのものを抑制しようという研究成果で、2つ目のトピックスは、アミロイドベータが凝集することによって発揮される毒性から、脳内の神経細胞を守ろうという研究成果でした。

どちらの研究もアミロイドベータに着目したものですが、そのアプローチは全く異なるものだと言えます。このように現在も進んでいる様々な研究が人類が抱える長年の大問題に、様々な角度から多角的にメスを入れ、そこから少しずつ光が見えてきていると感じるのは私だけではないはず。今後の研究に大いに期待しましょう!

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Category : 健康・医学の最新情報