胃粘膜の萎縮が脂質代謝にも影響!ピロリ菌除菌で動脈硬化予防も

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ピロリ菌の感染による胃粘膜の萎縮が、血液中の善玉や悪玉コレステロールといった脂質関連値に影響を及ぼす可能性が示されました。ピロリ菌の除菌は胃がん予防だけでなく、動脈硬化を抑制し、心筋梗塞や脳卒中などの予防効果も期待できるかも知れません。

ピロリ菌に関するもう一つの側面

「 ピロリ菌の感染は胃がん発症の大きな原因になります。 」

最近よく耳にする言葉ですが、今やピロリ菌と言えば「胃がんの原因」という側面ばかりがクローズアップされ、将来の胃がん予防のための除菌治療がさかんに推奨されている状況です。

ピロリ菌の感染が断続的に胃炎を引き起こし、長い年月をかけて胃粘膜を萎縮させ、それがやがて胃がんの発症に繋がる…という一連のプロセスについては、「ピロリ菌が胃がんを引き起こすプロセスを図解でわかりやすく解説」で詳しく解説しております。

その一方で、ピロリ菌の感染は胃がんリスクだけではなく、実は、血液中のコレステロールや中性脂肪などの脂質を正常に保つ「脂質代謝」にも影響を及ぼす可能性についても、かねてより指摘されていました。

但し、このピロリ菌の脂質代謝との関連性については、これまでの研究では一致した結論は得られておらず、なかなか表立って出てくることはありませんでした。

ところが今回、そんなピロリ菌のもう一つの側面である、「脂質代謝に及ぼす影響」に関する最新の注目すべき報告があったので、当サイトでも取り上げておくことにします。

ピロリ菌の感染が脂質代謝に影響及ぼすことを確認

亀田総合病院附属幕張クリニックの島本武嗣氏、東京大学大学院消化器内科の山道信毅氏は、ピロリ菌による胃粘膜の萎縮が血中のHDLコレステロール(善玉コレステロール)やLDLコレステロール(悪玉コレステロール)といった脂質関連値に影響を及ぼす可能性があることを明らかにしました。

この研究では、ピロリ菌感染の有無と胃粘膜の萎縮度から、将来の胃がんリスクを測定する「胃がんリスク検診」の受診者のうち、一定の条件を満たした 5,917例を対象に、コレステロールや中性脂肪などの脂質関連値とピロリ菌感染による胃粘膜の萎縮度など(※1)との関連について検討されました。

より厳密には、脂質関連値との関連性が検討されたのは、「胃粘膜の萎縮度」だけでなく、胃粘膜の炎症の程度を示す「胃粘膜の肥厚の程度」やピロリ菌の菌体数や胃粘膜の炎症の程度を反映する「ピロリ菌抗体価」との関連についても検討されています。

もっとも、この研究で得られた主な脂質関連値との関連性は、胃粘膜の萎縮度、肥厚の程度、ピロリ菌抗体価の全てにおいて同様の傾向が見られたことから、本記事ではより理解しやすいように「胃粘膜の萎縮度」との関連だけに特化して解説することにしました。

胃粘膜の萎縮の進行とHDL、LDLコレステロールの変化

胃粘膜の萎縮の進行とHDL-C値との関連性

分析の結果、善玉コレステロールであるHDLコレステロールは、グラフが示す通り、胃粘膜の萎縮が進むにつれて大幅に減少することがわかりました。

特に、胃粘膜の萎縮が中等度から重度かけて、HDLコレステロールは激減しているのが特徴的ですね。


胃粘膜の萎縮の進行とLDL-Cの値との関連性

また、悪玉コレステロールであるLDLコレステロールも、胃粘膜の萎縮が進むにつれて右下がりの減少傾向が見られました。

但し、こちらはHDLコレステロールで見られた変化とは逆に、胃粘膜の萎縮度が中等度以上の高い水準になると、その減少量が大幅に鈍ることが確認されたのです。


つまり簡単に言うとどういうこと?

胃粘膜の萎縮が進めば進むほど、HDLコレステロールの減少量は顕著に大きくなる一方で、LDLコレステロールも減少傾向にはあるものの、その減少量は萎縮が進むにつれて大幅に縮小しています。

つまり、善玉であるHDLコレステロールと悪玉であるLDLコレステロールの比率を見た場合、胃粘膜の萎縮が進めば進むほど、悪玉コレステロールが相対的に増加傾向にあり、脂質プロフィールが増悪することがわかったのです。

また、ここでは脂質関連値の代表である、HDLコレステロールとLDLコレステロールのみを取り上げていますが、それ以外の「non-HDL-C」(※2)や「LH比」(※3)でも、胃粘膜の萎縮度との有意な関連性が認められました。

※2
「non-HDL-C」とは、総コレステロール値から、善玉コレステロールであるHDL-C値を引いた数値です。
※3
「LH比」とは、悪玉コレステロールと善玉コレステロールの比率で、具体的には「悪玉コレステロール/善玉コレステロール(LDL-C / HDL-C)」で表されます。

中性脂肪は胃粘膜の萎縮との関連性が認められず

但し、同じ脂質関連値の中でも、中性脂肪と呼ばれる「トリグリセライド」だけは、胃粘膜の状態との有意な関連性は認められなかったのだとか。

もしかすると、これまでの研究で一致した結論が得られていなかった理由の一つは、前述のコレステロールと中性脂肪を「脂質関連値」として、一緒くたに見ていたせいかも知れませんね。

胃がん予防だけじゃない!ピロリ菌除菌で動脈硬化予防も

胃粘膜の萎縮が進む主な要因はピロリ菌の感染ですから、ピロリ菌に感染している人は、胃粘膜への影響が進む前にピロリ菌を除菌することにより、それ以上の萎縮に歯止めをかけることができます。

もちろんそれによって、その後の胃がん発症リスクを低減しうることに違いはありませんが、今回の研究成果により、得られる利益はそれだけではない可能性が示されたわけです。

ピロリ菌を除菌し、胃粘膜の萎縮を防ぐことで、脂質プロフィールの増悪を抑えることができるのであれば、脂質異常を原因とする動脈硬化の予防にも繋がり、ひいては動脈硬化が引き金となって起こる心筋梗塞や脳卒中など、動脈硬化性疾患の予防をも期待できると考えることもできます。

ピロリ菌を除菌することで2つの恩恵が得られる人

特に、慢性的な胃痛や胃の不快感に悩まされていたり、頻繁に胃の調子を崩すような人、さらに親御さんにピロリ菌の感染歴がある(※4)など、ピロリ菌に感染している可能性が高く、かつ、脂質異常症を持っている人は、この機会にピロリ菌の除菌を考えてみてはいかがでしょうか。

ちなみに、ピロリ菌の除菌によって善玉コレステロール値が25%も増加したとの報告(Am J Cardiol 2004; 93: 219-220)もあります。

※4
上下水道が整った現在では、ピロリ菌の主な感染経路は、まだ免疫機能が十分に発達していない幼少期に、ピロリ菌に感染している親が咀嚼したものを食べることによる親子感染によるものとされています。

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Category : 胃痛・胃の不快感・胸焼け