あなたがこの10年間に胃がんを発症するリスクはどれくらい?

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今回、国立がん研究センターにより、今後10年間で胃がんを発症する確率を把握できる「胃がん罹患率予測モデル」が作成されました。この予測モデルは単にあなたの胃がんリスクを数値で示すだけのものではありません。予測モデルのポイントと概要、有効活用の必要性について。

この10年間に胃がんを発症する確率

あなたはご自身が、この10年間に胃がんを発症するリスクがどの程度なのかを知っていますか?

実は、あなたが将来胃がんを発症するリスクを、現時点である程度予測することは可能なのです。

今回、国立がん研究センターにより、それぞれが有している胃がんの危険因子を総合的に考慮して、今後10年間で胃がんを発症する確率をより具体的に、視覚的に把握することのできる予測モデルが作成されました。

この予測モデルは、日本人を対象とした大規模かつ長期に渡る調査研究により得られたデータを基に構築されたものですが、これは単にあなたの胃がんリスクを数値で示すだけのものではありません。

個々の人々がそれぞれのリスクに応じた、最適な胃がん対策を考えるための足がかりになりうるものなのです。

予測モデルをより活用するために

但し、この予測モデルを有効に活用するためには、胃がんリスクを構成する主要な危険因子について、それが胃がんの発症にどのように関与しているのか、胃がん発症の具体的なプロセスを理解しておく必要があると考えました。

そこで、サプリメントマニュアルは、ピロリ菌の感染から胃がん発症に至るプロセスを、図解を用いてより具体的に、出来る限りわかりやすく解説したコンテンツを用意しております。

► ピロリ菌が胃がんを引き起こすプロセスを図解でわかりやすく解説

本記事を読み進めるに当たり、この記事もあわせて一読していただけると、より一層理解が深まると思います。


「胃がん罹患率予測モデル」のポイントと概要

それではいよいよ本題です。
今回、国立がん研究センターにより作成された「胃がん罹患率予測モデル」のポイントは、胃がんの主要な危険因子である「ピロリ菌の感染の有無」と「萎縮性胃炎の有無」という2つの要因を軸としていることです。

この2つの要因が胃がんリスクを構成する主要因であることは、前述した解説記事を一読していただければ容易にイメージできると思うのですが、ここで注目すべきは、ピロリ菌感染の有無」と「萎縮性胃炎の有無」という2つの主要因は、簡単な血液検査だけで把握することができるという点です。

より具体的には、ピロリ菌に感染しているか否かは、血液中にピロリ菌に対する抗体が見られるか否かでわかります。また、萎縮性胃炎の有無、及びその程度は萎縮性胃炎の関連物質であるペプシノゲン(ペプシノーゲン)の血中濃度を測定することにより把握することができるのです。

胃がんリスクの「ABC分類」について

そこで、日本の6府県に住む40~69歳の約1万9千人を対象に実施された大規模調査において、調査開始時に被験者の血液を検査し、ピロリ菌の抗体が検出されたか否か、ペプシノゲンの血中濃度から分かる胃粘膜の萎縮度が高いか低いかで、被験者を次のようなA~D群の4つのグループ分類しました。

胃がんリスクのABC分類の解説図

この分類法は「ABC分類」と呼ばれています。胃がんリスクを評価する際に一般的に用いられている手法で、ピロリ菌検査とペプシノゲン検査の2つの検査結果を組み合わせて胃がんリスクを評価するもので、「胃がんリスクABC分類検査ABC検診)」と呼ばれているものです。

さらに、その他の危険因子を加味

その上で、その後の被験者の胃がん罹患率を、1993年から2009年まで追跡調査して得られたデータを40~70代の各年代ごとに集計し、さらに喫煙や飲酒、塩分の摂り過ぎなどの生活習慣因子や遺伝的因子などの「その他の危険因子」を加味して構築されたものが、この「胃がん罹患率予測モデル」なのです。

男女別・年代別「胃がん罹患率予測モデル」

予測モデルのポイントと概要がわかったところで、今回発表された、40~70代の各年代別に今後10年間に胃がんを罹患するリスクが示された、実際の「胃がん罹患率予測モデル」を男女別に見ていくことにしましょう。

【男性】 今後10年間に胃がんを罹患する確率

男性の胃がん罹患率予測モデル

各グループ別に3本ずつ並んだグラフのうち、一番左の白抜きのグラフは、上記のABC分類によって得られた調査結果に、飲酒習慣や塩分の摂り過ぎ、家族歴などのその他の危険因子が全て存在しない場合のデータを示しています。

逆に、それらのマイナス要因を全て有している場合のデータは、一番右のグレーのグラフで示されており、真ん中の黒塗りのグラフは、純粋にABC分類のみのデータを示しています。

男性が今後10年間で胃がんを発症する確率は、40歳でピロリ菌も萎縮性胃炎も認められなかったA群に分類され、かつ、その他のマイナス危険因子が全く存在しない場合の 0.04%が最小リスクでした。

逆に、70歳で胃粘膜の萎縮度がピロリ菌が生息できなくなるほど進行したD群に分類され、かつ、マイナスの環境因子を全て有する場合の 14.87%が最大リスクとの結果が得られました。

【女性】 今後10年間に胃がんを罹患する確率

女性の胃がん罹患率予測モデル

一方、女性の場合は胃がんの発症率こそ男性に比べると低めではありますが、男性と全く同様の傾向が見られました。すなわち、最も発症率が低かったのは40歳・A群・その他の危険因子無しで 0.03%、逆に最も高かったのも70歳・D群・危険因子全て有りの 4.91%でした。

C群とD群についての疑問

ともに萎縮性胃炎が認められ、胃粘膜の萎縮度が高いC群とD群は、ピロリ菌の感染が認められるか否かによって区別されています。ピロリ菌の感染と胃粘膜の萎縮が、ともに胃がん発症の危険因子であるならば、この2つの危険因子をあわせ持つC群の方が、D群よりもリスクが高くなって当たり前だと言えましょう。

ところが、この両者のリスクを比べてみると、C群もD群もほとんど変わりません。それどころか、むしろピロリ菌の感染が認められないD群の方が、男女ともに全ての年代で胃がん発症リスクがC群よりも若干高くなっているのです。

これは一体どういうことなのでしょう?

胃がんリスクが最も高いD群にピロリ菌の感染が認められないのは、ピロリ菌が生息できなくなるほど胃粘膜の萎縮度が進行していると解釈するべきなのです。

つまり、D群に属するほど胃粘膜の萎縮が進んでいる人の大多数は、過去にピロリ菌が存在しており、胃粘膜を散々荒らし回った挙げ句に自らが住みにくい状態に陥り、やがて流されて消えてしまった状態を意味していると考えられます。

「胃がん罹患率予測モデル」の必要性

いかがですか?ピロリ菌の感染と萎縮性胃炎の有無という2つの要因さえ把握することができれば、この「胃がん罹患率予測モデル」によって、あなたがこの10年間に胃がんを発症するリスクを知ることができるわけです。

とは言え、自分がABC分類におけるA群~D群のどこに属しているのかが分からない限り、この予測モデルを利用することはできません。そして現時点で、ご自身のピロリ菌の感染と萎縮性胃炎の有無を把握している人は少ないのではないでしょうか。

一般に、ピロリ菌の感染と萎縮性胃炎の有無を調べるには、医療機関での検査が必要です。しかし現在では、自宅にいながらにして、この2つの要因について医療機関で実施される検査と同等の精度で診断できる検査キットが、手頃なお値段で手に入るようになっています。

でも、そんな検査を受けてまで、自分の将来の胃がんリスクを知って意味があるの?

そんな声が聞こえてきそうですが、本記事の冒頭でも述べた通り、この予測モデルは、単にあなたの将来の胃がんリスクを視覚的に示すだけのものではありません。実は、これをじっくりと分析することで見えてくることがあるのです。

厚生労働省が推奨する胃がん検診について

例えば、これまで厚生労働省は胃がん検診として、40歳以上に対して年1回のエックス線検査を奨励してきましたが、2016年度より、50歳以上を対象に2年に1回の内視鏡検査が推奨されることになりました。
(実際は、検査体制の不備などを理由に、今しばらくは年1回のエックス線検査と、2年に1回の内視鏡検査のいずれかの方法を選択することになりそうですが…)

しかし、これまで見てきたように、それぞれが抱える胃がんの危険因子とその程度は人によって異なりますし、当然にして、それによって導かれる胃がんリスクも人それぞれなのです。

この厚生労働省の推奨に従った場合、過剰な検査になってしまう人もいるでしょう。逆に、胃がん治療にとって何よりも重要な、胃がんの早期発見を逃してしまう危険性もあるのです。

最適な胃がん対策は人それぞれ

  • あなたが受けるべき胃がん検査方法はエックス線検査ですか?
  • それとも内視鏡検査ですか?
  • その検査の頻度は本当に年に1回も必要ですか?
  • 逆に2年に1回で大丈夫ですか?
  • そもそも、あなたにとって何より効果的な胃がん予防対策を把握し、実践していますか?

今回とりあげた「胃がん罹患率予測モデル」は、それぞれが抱えている個別的な疑問や不安に対して、一つ一つ答えを出すために必要なデータを提供してくれるツールでもあると考えています。

そこで次記事では、実際にこの予測モデルをじっくりと分析することで初めて見えてくる、注目すべき3つのポイントを挙げた上で、そこから導かれるそれぞれのリスクに応じた胃がん対策を具体的に考えてみたいと思います。

►► 自分に最適な【胃がん検診】の検査方法や検査頻度を知る方法


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Category : 胃痛・胃の不快感・胸焼け