ピロリ菌が胃がんを引き起こすプロセスを図解でわかりやすく解説

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ピロリ菌が胃粘膜に炎症を引き起こし、やがてそれが胃粘膜を萎縮させ、遂には胃がんに至るという一般的なプロセスを、できる限りわかりやすく解説してみました。このプロセスを理解することは、より有効かつ効率的な胃がん予防策を講じる上で非常に重要だと考えています。

胃がんの発症リスクを予測する危険因子

実は、あなたが将来胃がんを発症するリスクを、現時点である程度予測することが可能なことをご存知ですか?その際に最も重要となる要因は次の2点です。

  • ピロリ菌感染の有無
  • 萎縮性胃炎の有無

この2つの要因が、胃がんの発症と具体的にどのように関係しているのかを理解するために、ピロリ菌の感染から慢性胃炎、そして萎縮性胃炎を経て胃がん発症に至る一般的なプロセスを見ていくことにしましょう。

ピロリ菌が胃粘膜に炎症を起こす複数の要因

感染したピロリ菌は、胃粘膜から分泌される強力な胃酸から自らを守るために、まずは自分の居場所を確保しなければなりません。そのためにピロリ菌は、「ウレアーゼ」と呼ばれる酵素を分泌して、胃粘膜中の尿素を分解してアンモニアを生成します。

つまり、強力なアルカリ性物質であるアンモニアを生成することによって、ピロリ菌は自分の周りの胃酸(酸性)を中和し、下図のようにバリアを作ることで、自らの居場所を確保するわけです。そして、この時に生成されるアンモニアが胃粘膜に炎症を起こす原因の一つとなります。

ピロリ菌がウレアーゼを分泌してアンモニアを生成し胃酸を中和するイメージ

しかし、それだけではありません。胃粘膜にとりついたピロリ菌は、サイトトキシンと呼ばれる毒素を分泌し、これが粘膜組織にダメージを与えると同時に、粘膜溶解酵素を産生し、胃粘膜を守っている粘液を引きはがしにかかります。

やがて、下図のようにむき出しになった粘膜組織は、自らの胃酸によっても損傷を受けることになり、このことも粘膜組織が炎症や潰瘍を起こす原因となってしまうのです。

さらに、胃粘膜に棲みついたピロリ菌は、身体にとってみれば外敵に他なりません。すると、これを排除しようと免疫反応が起こり、白血球が活性酸素などの化学物質を放出します。胃粘膜はこの活性酸素によってもダメージを受けることになります。

胃粘膜組織が炎症を起こす複数の要因

以上のように、ピロリ菌に関連する複数の要因が複合的に働くことにより、胃粘膜に炎症を引き起こすと考えられています。そして、このような炎症が繰り返され、慢性化した状態が「慢性胃炎」なのです。

ピロリ菌が胃潰瘍や胃ポリープ、機能性胃腸症の原因に

これらのピロリ菌による個々の影響は、決して大きなものではないのですが、それが長期に渡って断続的に繰り返されることで、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃ポリープなどを発症するリスクが必然的に高まってしまいます。

また、胃液や胃酸などを分泌する胃の粘膜組織の細胞は、慢性的な炎症を繰り返すことにより少しずつ減少し、長い時間をかけて次第に胃の粘膜自体が薄くなっていきます。

胃液を分泌する胃粘膜が薄くなってくると、胃液が十分に分泌されなくなることは言うまでもありません。さらに胃の膨らみも少なくなるため、あまりものが食べられなくなったり、消化を促す蠕動(ぜんどう)運動も弱くなってしまいます。

そうなってくると食欲不振をまねいたり、胃の中の食べ物がうまく消化できなくなり、胃もたれなどを引き起こす機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)の原因ともなるわけです。

そして、以上のような症状が長期に渡って繰り返されるうちに、やがて胃粘膜はより薄く、痩せて萎縮した状態になってしまいます。この胃粘膜の萎縮が進み慢性的に炎症を起こしている状態を 「萎縮性胃炎」 と呼びます。

ピロリ菌の感染が慢性胃炎を経て萎縮性胃炎に進行

胃がんリスクは胃粘膜の萎縮度が進むほど高くなる

これまでの研究でも胃粘膜の萎縮と胃がん発症との間には深い関連性があるとされてきたものの、じゃあ胃粘膜の萎縮度がどれだけ進めば、実際に胃がんの発症率がどの程度上昇するのかについては、一致した結果が得られていませんでした。

ところが、つい最近の研究で、この萎縮性胃炎の状態を放置し、胃粘膜の萎縮度が進めば進むほど、胃がんの発症リスクが高くなることを、具体的な数値でもって示した研究成果が報告されたのです。

その後胃癌を発症した患者は、正常粘膜群では256人に1人、非萎縮性胃炎群では85人中1人、萎縮性胃炎群は50人中1人、腸上皮化生群は39人中1人、異形成群では19人中1人だった」と総括。

簡単に解説します。

非萎縮性胃炎とは、文字通り胃粘膜の萎縮をともなわない、一般に”慢性胃炎”と呼ばれるものです。

この慢性胃炎を長期に渡って断続的に繰り返すうちに、やがて胃粘膜に萎縮が認められるようになり、その段階に至った胃炎が「萎縮性胃炎」です。

さらに炎症が進行し、通常は粘液で守られている胃粘膜の上皮組織に変質が認められる状態を「腸上皮化生(ちょうじょうひかせい)」と呼び、それがさらに悪化して、上皮組織の細胞が正常では見られないような形態になった状態が「異形成」です。

つまりこの報告は、胃粘膜が正常な状態(胃がん発症率: 0.04%) → 非萎縮性胃炎( 1.18%) → 萎縮性胃炎( 2%) → 腸上皮化生( 2.56%) → 異形成( 5.26%)というように、胃粘膜の萎縮度が進めば進むほど、胃がんの発症リスクが顕著に高くなっていることを具体的な数値で示した貴重な研究成果だと言えますね。

その他の危険因子を加味する必要性も

以上、将来の胃がんリスクを評価する上で重要となる、ピロリ菌感染と萎縮性胃炎の有無という2つの要件について具体的に見てきたわけですが、実際に胃がん発症リスクを考える場合は、実はこの2つの要因だけでは足りません。

胃がんの発症リスクを飛躍的に高めると考えられる喫煙や飲酒習慣、塩分の摂り過ぎ、野菜不足などの生活習慣因子、さらには胃がんの家族歴といった遺伝的因子も見過ごすわけにはいかないのです。

ピロリ菌の感染から胃がん発症に至るプロセス

今後10年間における胃がん罹患率の予測モデル

そして今回、これらの胃がん発症に関わる主要な危険因子を、日本人を対象とした大規模かつ長期的な調査研究の統計情報に加味することによって、今後10年間に胃がんを発症するリスクの予測モデルが、国立がん研究センターにより作成されました。

この予測モデルは、単にあなたの胃がんリスクを数値で示すだけのものではありません。個々人がそれぞれのリスクに応じた、より有効かつ効率的な予防策を得るための足がかりになりうるものなのです。

そこで、サプリメントマニュアルでは次の2記事に渡って、単にこの予測モデルの概要をご紹介するにとどまることなく、さらに一歩踏み込んで、そこから導かれるより有効な胃がん対策についてじっくりと考えてみました。

►► あなたがこの10年間に胃がんを発症するリスクはどれくらい?
国立がん研究センターにより作成された、「胃がん罹患率予測モデル」のポイントと概要、有効活用の必要性をテーマにした記事です。下記記事の前提となる知識を分かりやすく解説しています。

►► 自分に最適な【胃がん検診】の検査方法や検査頻度を知る方法
上記記事を踏まえた上で、実際に「胃がん罹患率予測モデル」をじっくりと分析することで導かれる、それぞれのリスクに応じた最適な胃がん対策を具体的に考えてみました。

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Category : 胃痛・胃の不快感・胸焼け