自発的脱水の恐怖と最新ガイドライン推奨の経口補水液レシピ

Category : 熱中症
「自発的脱水を予防する経口補水液のレシピ~最新ガイドライン準拠」の続きを読む

水を飲めば飲むほど脱水症状が進む”自発的脱水”のメカニズムと、注意すべき症状を明らかにした上で、この自発的脱水を予防し、熱中症対策としての水分補給に理想的な経口補水液の手作り方法を詳しく解説しています。経口補水液の最新ガイドラインに準拠したレシピです。

これまでサプリメントマニュアルでは、先ごろ公開された最新のガイドラインである”熱中症診療ガイドライン2015”を、一般の方でも有効に活用できるように、熱中症に関する重要なポイントについて、より具体的に、より実践的な形でまとめてきました。

今回は、熱中症の予防や治療のための”水分補給”に焦点を当てて、ガイドラインに準拠した水分補給法について具体的に見ていくことにします。

飲めば飲むほど脱水に?「自発的脱水」の恐怖とメカニズム

熱中症対策として何よりも重要なのは水分補給ですが、ただ水分のみを補給すれば良いというわけではありません。なぜなら発汗によって失われるのは、水分だけではなくナトリウムなどの電解質も同時に失われているからです。

少量の水分補給であれば特に問題にはならないのですが、大量の発汗を補う時など、大量の水分を補給しなければならない時に、水だけを飲んでしまった場合、体液中のナトリウム量、つまり塩分濃度がどんどん薄まってしまいます。

水だけを大量に飲んでしまうと…

すると身体は、体液中の塩分濃度を元に戻すために、せっかく飲んだ水分をそのまま尿として排出する一方で、それ以上の水分の摂取を控えようとします。つまり、身体から水分が尿としてどんどん失われていっているにもかかわらず、当の本人は喉の渇きすら感じられなくなるという”非常に危険な状態”におちいる可能性があるのです。

多くの人は喉の渇きがおさまったことで、もう十分に水分を補給したのだと錯覚してしまいがちですが、実は身体の中で脱水状態が急速に進んでいるこのような危険な状態を「自発的脱水」と言います。

自発的脱水を疑うべき場合

次に、この自発的脱水を疑うべき場合について考えてみましょう。自発的脱水におちいった場合の特徴的な症状としては、前述したように尿量が増加し、尿意を頻繁にもよおすようになります。さらに、身体がそれ以上の水分摂取を控えようとするため、少し前まで感じていた喉の渇きが感じられなくなったり、急に水を飲めなくなるといった症状となってあらわれます。

同時に、体液中の塩分濃度が低下した場合、筋肉の伸縮機能に影響が出るので、手足のつり(こむら返り)や筋肉痛などの症状があらわれ、さらに進むと痙攣(けいれん)のリスクが高まります。

日本救急医学会熱中症分類の解説図

上図は「日本救急医学会熱中症分類」に基づいて、熱中症の3つの重症度における具体的な熱中症の症状を分類したものです。より詳しくは、「 熱中症の重症度を3段階に分類 」を参照していただきたいのですが、痙攣(けいれん)症状がみられる場合には、重症度の最も重い「3度」に該当する可能性があるので、躊躇せずに救急車を呼ぶ必要があります。

これに対して、手足のつり(こむら返り)や筋肉痛は、現場での応急手当で対処すべき「1度」に該当する症状ですが、水分を十分に摂っているにもかかわらずこのような症状が見られる場合には、自発的脱水を疑い、補給する水分の内容を見直す必要があると言えましょう。

最後に、自発的脱水を疑うべき症状をまとめてみます。

  • 急に喉の渇きを感じなくなった
  • 水が飲めなくなった
  • 尿量の増加
  • 尿意を頻繁にもよおす
  • 手足のつり(こむら返り)
  • 筋肉痛
  • 痙攣(けいれん)

このような危険な状態を招かないためにも、多量の発汗による脱水を補うための水分補給には、私たちの体液の組成に近い飲み物を補給してあげる必要があるのです。では、体液の組成に近い飲み物とは具体的にはどういったものなのでしょう?

熱中症対策として何を飲めばいいの?

熱中症対策として、水分補給の重要性はさることながら、「水分補給として何を飲むか?」も実はとても重要で、ガイドラインでもこの点に関して、様々な角度から解説が入れられています。まずはガイドライン中の関連する記述を拾ってみましょう。

塩分と水分の両者を適切に含んだもの(0.1~0.2%の食塩水)が推奨される

つまり、先ほどは”電解質”だの”ナトリウム”だのという難しい単語が出てきましたが、要するに0.1~0.2%の食塩水が水分補給には望ましいということです。より具体的には、1リットルの水に対して、1~2gの食塩が入った食塩水が推奨されています。

しかし、それだけではありません。

小腸でナトリウムとブドウ糖は 1:1で吸収される

すなわち水分の補給だけでなく、体液中の電解質たるナトリウムの吸収を考慮するならば、ナトリウムと同量のブドウ糖が必要であるということです。1リットルの水に添加したナトリウムと同量のブドウ糖を砂糖で補給しようとすると、20~40gの砂糖が必要になります。

最新ガイドラインが推奨する水分補給に理想的な飲み物とは?

以上の2点を考慮すると、熱中症の予防や治療を目的とする水分補給を考えた場合、1リットルの水に対して1~2gの食塩と、20~40gの砂糖を加えたものこそが、身体が効率良く水分を吸収できる理想的な飲み物ということになります。

そしてこの理想的な組成を実現しているのが、最近話題の「経口補水液ORS:Oral Rehydration Solution)」なのです。

スポーツドリンクと経口補水液

喉の渇きや熱中症予防として、スポーツドリンクを愛飲されている方も少なくないのではないでしょうか。水分補給に必要な電解質と糖分を含み、さらに美味しく飲むことにも重点を置いて作られているスポーツドリンクは、熱中症の予防という観点から見ても、大抵の場合は問題がありません。

スポーツドリンクと経口補水液を比較

しかし、より厳密に見た場合、正常な血中のナトリウム濃度が 136mEq/L 以上であるのに対して、一般的なスポーツドリンクのナトリウム濃度は 10~38mEq/L とかなり低くなっており、真水ほどではありませんが、これをがぶ飲みしてしまうと血液中のナトリウム濃度を維持することが難しくなるのです。

さらに、スポーツドリンクと経口補水液を飲み比べてみた方は実感されていると思いますが、経口補水液に比べてスポーツドリンクには、かなり多くの糖分が含まれていることがわかるはずです。

つまり、スポーツドリンクを水分補給として利用することはできますし、多くの場合は問題が起こることもありません。しかし、少なくともスポーツドリンクには塩分が少なく、逆に糖分が多いということをしっかりと認識しておく必要があるのです。

1日に飲む量は?高齢者は習慣づけを

ガイドライン上で推奨されている1日当たりの飲水量の目安は次の通りです。

高齢者を含む学童から成人 500 ~ 1,000ml /日
幼児 300 ~ 600ml / 日
乳児 体重1kg当たり 30 ~ 50ml / 日

もちろんこの数字は、個人の体格や活動量、生活習慣、住環境の他、例えばどのような薬を服用しているかなどによっても当然異なります。前記事でも解説しましたが、特に高齢者は様々な理由から脱水症が生じやすく、また加齢にともなって自分が脱水状態であることに気付きにくくなります。

そこで、たとえ喉の渇きを感じていなくても、少しずつでも定時に経口補水液などを飲むような習慣を付けるなど、生活習慣上の工夫をしていくことが有効だと言えますね。また、特に高齢者の中でも誤嚥リスクが高い人には、最近では経口補水液をゼリー状にした商品なども販売されているので、それらを有効に活用すると安心です。

最新ガイドラインに準拠した経口補水液のレシピ

経口補水液は発売当初こそ割高感はありましたが、現在ではドラッグストアやネット通販などで”まとめ買い”をすれば、随分手頃なお値段で手に入るようになりました。それでも、毎日500ml~1000mlも飲み続ける必要があると考えると、金銭的な負担は少なくありません。

経口補水液のレシピ

しかし、この経口補水液、実は簡単に手作りすることが可能なのです。

以前にこのサイトでもご紹介したことがあるのですが、最後に、最新ガイドラインに準拠した経口補水液のレシピ」という形で、より厳密に吸収率の高い経口補水液のレシピを考えてみることにします。


理想的な経口補水液の組成

先ほどは、水分補給の理想的な飲み物である「経口補水液」の組成について、次のように結論づけました。

1リットルの水に対して1~2gの食塩と、20~40gの砂糖を加えたもの

具体的にこれを実践しようと考えた場合、含まれる塩分と糖分にかなり幅があることがわかります。私も手作り経口補水液を常備するようになって約1年、この範囲の中で、自分なりに色々と試行錯誤してきた結果、最近固まっているレシピを今回あらためて明記しておくことにします。

※以下のレシピは、上白糖の大さじ1杯を9g、あら塩の小さじ1杯を5gとして計算しています。

1リットルのペットボトルで作り置きする場合
材料 分量 計量
1.水 1 リットル -
2.あら塩 2 g 小さじ半分弱
3.上白糖 40 g 大さじ4杯半
4.レモン果汁 5 cc 小さじ1杯
2リットルのペットボトルで作り置きする場合
材料 分量 計量
1.水 2 リットル -
2.あら塩 4 g 小さじ1杯弱
3.上白糖 80 g 大さじ9杯
4.レモン果汁 10 cc 小さじ2杯

塩分が気になる人の場合のレシピ

塩分を最低限にしたので、糖分もその分だけ減らします。また、味が薄くなるのでレモン果汁も若干減らしてみました。
(1リットルの水に対して食塩1g、砂糖20g)

1リットルのペットボトルで作り置きする場合
材料 分量 計量
1.水 1 リットル -
2.あら塩 1 g ひとつまみ
3.上白糖 20 g 大さじ2杯
4.レモン果汁 3 cc 小さじ1半分~
2リットルのペットボトルで作り置きする場合
材料 分量 計量
1.水 2 リットル -
2.あら塩 2 g 小さじ半分弱
3.上白糖 40 g 大さじ4杯半
4.レモン果汁 5 ~ 10 cc 小さじ1~2杯

塩分について

塩分はあら塩でも食塩でもどちらでも良いのですが、あら塩の方がミネラル分が豊富ですので、私はいつもあら塩を使っています。但し、塩を計量スプーンで量る場合、小さじ1杯の分量は厳密に言うと次の通りです。

あら塩 小さじ1杯 5 g
食塩 小さじ1杯 6 g

2リットルのペットボトルに作り置きする場合、必要な塩分は最大で4gですので、レシピ上では「小さじ1杯弱」としましたが、特に食塩で作る場合は、小さじ半分程度まで減らす必要があると言えますね。

レモン果汁について

レモン果汁はポッカレモンを使っています。大さじ1杯入れてしまうと酸味が強くなり過ぎるので、大さじ3分の2程度(小さじ2杯)に抑えていますが、酸味が強い方が良いという方はお好みで増やしてみると良いと思います。

また、”レモン果汁”と書きましたが、レモンに限らず柑橘類の果汁でも良いですし、無理に入れなくてもOKだと思います。

糖分について

糖分については、スポーツドリンクと比べると甘みが抑えられていますので、むしろこちらの方が後味がスッキリとしていて、全体的にとても優しい感じがします。

逆に、スポーツドリンクと同程度に甘くしようとすると、かなりの上白糖を入れなければなりません。含まれている塩分量の少なさだけでなく、糖分の多さという点から考えても、スポーツドリンクのがぶ飲みは少し怖いと感じました。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

はてなブックマーク
LINEで送る
up
Category : 熱中症