飲酒時のL-システイン服用で胃がん予防!但し、糖尿病リスク に注意

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二日酔い予防などで知られる L-システインが、飲酒時に発生するアセトアルデヒドの増加を抑え、胃がんを予防する可能性が示されました。その一方で、L-システインの積極摂取は糖尿病を誘発するとの副作用の報告も…そこで、L-システインの安全な活用法を考えてみました。

つい先日、美白や二日酔い対策などで知られる人気の成分”L-システイン”が、飲酒による胃がんのリスクを顕著に軽減する可能性を示した、注目すべき研究成果が報告されました。

しかし、その一方で、L-システインの積極摂取が糖尿病を誘発する危険性を指摘した報告もあります。そこで、この二つの報告に基づいて、胃がん予防として、この L-システインをより安全に活用する方法を考えてみました

その過程で必要と思われる最低限の知識についても、できる限りわかりやすく解説するよう心がけたせいか、少々回りくどい構成になってしまいました。要点や結論だけでも読んでいただけるよう、まず最初にこの記事の目次を掲載しておきます。

お酒が強い人、弱い人、飲めない人がいる理由

飲酒により体内に摂取されたアルコールは、肝臓の働きによってアセトアルデヒドに分解されるのですが、このアセトアルデヒドは非常に毒性が強く、WHO勧告でも明確な発がん物質とされています。

アルコール代謝の解説図

このアセトアルデヒドはその後、”ALDH”と呼ばれる分解酵素によって、最終的には無害な酢酸に代謝されるのですが、実はこの分解酵素の働きの強弱は、分解酵素自体がもつ遺伝子により決まってきます。

6種類ある分解酵素”ALDH”のうち、アルコール代謝で発生したアセトアルデヒドを分解する主な酵素は”ALDH2”と呼ばれる酵素で、さらにこの”ALDH2”の遺伝子を見た時、酵素の働きが強い「N型」と、働きの弱い「D型」の2種類に分けることができます。

人は誰しもこれらの2種類の遺伝子のうち、両親から一つずつを受け継いでいるのですが、実はこのことこそが、お酒が強い人、弱い人、飲めない人という3つのタイプを作り出している理由に他なりません。つまり・・・

アセトアルデヒド分解酵素”ALDH2”の遺伝子の型とお酒が飲める人、飲めない人

まず、D型+D型の”お酒を受け付けない人”は、いわゆる”下戸”と呼ばれる人です。このタイプの人は、自分がお酒を飲めないことを自覚しているので、無理矢理飲まされるようなことさえなければ、飲酒によるアセトアルデヒドの毒性にさらされることはありません。

次に、N型+N型の”お酒が強い人”は、絶対的な飲酒量がどうしても多くなってしまい、ご自分のアルコール代謝能力を超えてアルコールを摂取した場合に問題になってきますが、やはり最も危険なタイプは、N型+D型の”お酒は弱いが飲めてしまう人”だと言えます

最も危険なタイプの人の特徴と落とし穴

グラス1杯のビール程度ですぐに顔が赤くなってしまう人が、この危険なタイプに該当するのですが、お酒の量も結構飲めてしまう人も少なくありませんし、年齢とともに赤くなりにくくなったり、飲めるお酒の量も増えてきたりします。

しかし、前述のようにアルコールの代謝能力は遺伝子で決まっているので、飲める量が増えてきたからと言って、”お酒が強い人”になったわけではありません。むしろ身体がアセトアルデヒドの毒性に暴露する機会や時間が増えることにより、がんのリスクがどんどん上がっている危険な状況だとも言えるのです。

飲酒は様々ながんのリスク要因です

次に、飲酒によるアルコール摂取とがんとの関連を見ていくことにしましょう。WHOはアルコール飲料そのものや、アルコールを代謝する過程で発生するアセトアルデヒドなどを発がん物質として結論づけています。

飲酒により摂取されたアルコールは、まず、胃の中でアセトアルデヒドに分解されるのですが、分解酵素の働きが強い”お酒が強い人(N型 + N型)”の場合、ほとんどのアセトアルデヒドは胃の中で無害な酢酸に分解することができます。

これに対して、前述のN型+D型である”お酒に弱いが飲めてしまう人”の場合はこうはいきません。胃の中のアセトアルデヒドは代謝されないまま小腸に達すると、そこから吸収され血液中に溶け出して体中を巡ります。つまり、発がん性のある有毒物質が全身をかけめぐるのです。

その間に、この有毒物質を解毒しようと肝臓がダメージを受けることは言うまでもありません。小腸で吸収されなかったアセトアルデヒドが大腸に至るとこれにダメージを与えます。全身を巡る血液中に含まれるアセトアルデヒドは、やがて肺で気化して呼気として排出されるわけですが・・・

気化しやすく、粘着性が強いという性質をもつアセトアルデヒドは、呼気として排出される際に、口腔内の唾液などに溶け出し、再び体内に入って今度はノドや食道などに付着しダメージを与えます。

以上のように、飲酒によって体内に摂取されたアルコールのうち、その人の代謝能力を超えた未代謝のアセトアルデヒドは、全身の細胞にダメージを与えるのです。

これまでは飲酒と胃がんの直接的な関連は認められていなかった

飲酒が様々な種類のがんに関連することはご理解いただけたと思うのですが、では、この記事のテーマになっている胃がんとの関連はどうでしょうか?

実は、飲酒と胃がんとの関連については、欧米を中心に多くの研究が行われてきたものの、これまでは一致した結果は得られていませんでした。WHOの評価でも、飲酒が原因となるがん種として、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、食道癌、肝臓癌、大腸癌、乳癌が列挙されていますが、その中に胃癌は含まれていなかったのです。

飲酒による胃がんリスクの上昇は日本人にも認められた

ところが最近、これまで実施されてきた複数の研究データを系統的に集積し、あらためて分析した結果、多量の飲酒が胃がんの発症と関連するとの結果が得られたのです。

とは言え、日本人は欧米人に比べて遺伝子的にアルコールに弱いタイプが多く、国民全体の4割を占めとも言われています。さらに、胃がんの最大の原因とも言われるピロリ菌の感染率が高いこともわかっています。これらの日本人の特殊性を考慮すると、必ずしも欧米の研究結果がそのまま当てはまるとは限りません。

そこで、40~69才の男女約3万7千人の日本人を対象に、アルコールを代謝する酵素の遺伝子ごとに、飲酒量と胃がん発症の関連を調べてみたところ、飲酒によって胃がんのリスクが上昇することが日本人にも認められたのです。

【参考】 アルコール代謝関連遺伝子と飲酒量に基づく胃がん罹患について

そして今回、東北大学の研究チームにより、それを裏付けるような最新の研究成果が報告されました。飲酒時における胃液中のアセトアルデヒド濃度に関する報告なのですが、そこには次のような2つの興味深い側面があります。

お酒が弱い人の胃液中のアセトアルデヒド濃度は5.6倍に

これまでの研究でも、アセトアルデヒドの分解酵素である”ALDH2”の働きの強弱に関わらず・・・より具体的に言い替えると、お酒が強い人であるか弱い人であるかにかかわらず、”ALDH2”の代謝能力を超える酒量を摂取した場合は、アセトアルデヒドが代謝されずに体内に蓄積してしまうことは知られていました。

今回の研究では、”ALDH2”の働きが弱い”お酒が弱い人”は、”お酒が強い人”に比べて、飲酒にともなう胃液中のアセトアルデヒド濃度が 5.6倍も増加していることが確認されたのです。

このことは、”お酒が弱い人”は”お酒が強い人”に比べて、飲酒によって 5.6倍もの高濃度のアセトアルデヒドに胃の粘膜細胞が暴露することを意味しています。すなわち”お酒が弱い人”は、その分だけ飲酒による胃癌リスクが高くなると言うことに他なりません。

飲酒時に L-システイン服用でアセトアルデヒドの増加を抑制

非必須アミノ酸であるシステインは、自然界では L-システインの形で存在します。L-システインは強力な抗酸化能力を有し、代謝を促進してメラニン色素の生成を抑制し、美容効果の高い成分として注目を集めている成分です。

その一方で、L-システインは肝臓に対する解毒作用も高く、肝臓内でアルコールを分解する酵素の働きを助け、アルコールの分解速度を早める効果などを期待して、二日酔いの薬の成分としても利用されていました。

そこで今回、研究チームは、そんな Lシステインを飲酒の際に服用させ、胃液中に含まれるアセトアルデヒドを計測してみたところ、”お酒が強い人”で 67%、”お酒が弱い人”でも 60%ものアセトアルデヒドが低下していることが確認されたのです。

しかも、服用してから徐々に溶け出すタイプの L-システイン剤を利用することにより、この胃液中のアセトアルデヒドの増加を抑制する効果が2時間も持続したのだとか。

前述のように、これまでにも L-システインには悪酔いや二日酔いを予防する効果が認められていましたが、今回の研究により、Lシステインは単なる悪酔いや二日酔いの予防のみならず、胃癌の発症予防にも効果がある可能性が、初めて具体的な数字として示されたわけです。

【参考】 胃癌のリスクを減らすサプリメントL-システインの効果は二日酔い改善だけではない

L-システインの過剰摂取が糖尿病の原因に!

そんな L-システインは、実は食品にはほとんど含まれていません。そこで、必須アミノ酸であるメチオニンを摂取すれば、体内で L-システインを合成することは可能なのですが、残念ながらその合成量は、加齢とともに減少の一途をたどると言われています。

そこで活用したくなるのがサプリメントです。

今回のテーマである胃がん予防、二日酔い対策だけでなく、Lシステインはシミやそばかすを予防し、美白など美容効果も期待できる実に魅力的な成分です。

L-システインが魅力的であればあるほど、食品にはほとんど含まれず、合成量も加齢とともに減少するという特性から、特に最近では安易に L-システインやメチオニンといったサプリメントをすすめるシーンをよく見かけます

L-システインの副作用に関する最新報告

ところがです。サプリメントや健康食品などを利用した L-システインの積極的な摂取は、これまでにも”白髪が増える”などの副作用が報告されていましたが、最近になって糖尿病を発症させたり、悪化させる危険性を指摘した研究成果が報告されたのです。

細胞外液中のL-システイン濃度増加による膵β細胞のインスリン分泌不全が、PKM2タンパク質の可逆的な機能阻害により起こっていることを発見しました。

この発見により、膵β細胞のインスリン分泌不全を伴う糖尿病発症者において、細胞外L-システインの除去やPKM2の機能回復によって症状を緩和できる可能性が示されました。

L-システインは色素沈着症や二日酔いの緩和を目的として幅広く服用されていますが、無計画な摂取が糖尿病の発症や悪化につながる可能性があることが示されました。

この報告のポイントについて解説した論文の一節を引用させていただいたのですが、少々難解ですので誤解を恐れずごくごく簡単にご紹介してみましょう。

すい臓から分泌されるインスリンは、食後などに上昇した血糖値を下げる役割を果たしています。何らかの原因により、このインスリンの分泌量が低下したり、インスリンの作用自体が弱くなることにより、血糖値が異常に高くなってしまった状態が糖尿病です。

今回の研究において、L-システインの血中濃度が増加した時、すい臓のインスリン分泌量が著しく低下することが確認されました。逆に、その状況を長時間持続した後、Lシステインを除去したところ、わずか1時間半程度でインスリンの分泌が回復することも確認できたのだとか。

現在、色素沈着症や二日酔いの改善などを目的とした、L-システインを含む多くのサプリメントや健康食品が市場に出回っている状況にありますが、研究チームは、それらによる L-システインの無計画な摂取は、糖尿病の発症や悪化に繋がる恐れがあると結論づけています

L-システインの活用についてのサプリメントマニュアルの結論

以上、L-システインが胃がん予防に効果がある可能性があること。その一方で、L-システインの積極摂取が糖尿病に繋がる危険性があること。そんな有効性と副作用という相反する2つの研究成果をピックアップしてみました。

L-システインの胃がん予防効果は非常に魅力的なのですが、白髪の増加程度ならいざしらず、糖尿病の発症や悪化に繋がる危険性は看過することは到底できません。これらのLシステインの副作用を回避しながら、胃がん予防効果を享受しうる、より安全な活用法はないものでしょうか?

最後にサプリメントマニュアルとしての見解を示しておきたいと思います。

まずは飲酒が様々ながんの原因になることを自覚する

”飲酒は百薬の長”との言葉もある通り、適量の飲酒にはストレスを解消したり善玉コレステロールを増やし、脳梗塞や心臓病などの心血管疾患を予防するなどの健康効果が期待できます。

しかし、その一方で、飲酒が今回のテーマである胃がんだけでなく、食道がんや口腔がん、咽頭がん、肝臓がん、乳がんなど全身に渡る様々ながんの原因となっていることも事実なのです。

まず何より大切なことは、飲酒が様々ながんの原因となりうるという事実をキッチリと認識することだと言えましょう。特に、”お酒が弱いが飲めてしまう”最も危険なタイプの人はなおさらです。

もちろん”お酒が強い人”であっても、ご自身のアルコール代謝能力を超える飲酒は控えるべきですが、少量のお酒でもすぐに顔が赤くなってしまうような、前者のタイプに該当する人は、ご自身が普通の人よりも飲酒によるがんのリスクが格段に高くなっていることを、まずは自覚することが重要だと言えます。

L-システインの安全な活用法は?

その上で、今回の L-システインの胃がん予防効果を、糖尿病などの副作用の心配なく活用するためには、お酒が強い人も、そうでない人も、L-システインは「ここぞ!」と言う時にのみ服用するにとどめるべきだと考えます。

飲酒する際は、お酒の量はできる限りご自身のアルコール代謝能力の範囲内に抑えるべきですが、時にはどうしてもそれを越えてしまうこともあるでしょう。また、胃の調子が悪い時であったり、胃が痛い時などは、できる限り飲酒は避けるべきですが、どうしても誘いを断れないこともあるかと思います。

胃の調子を崩しているということは、すなわち胃の消化システムと防御システムのバランスが崩れている状況であると考えることができます。そのような状況でアルコールを摂取すると言うことは、無防備な胃粘膜を有毒なアセトアルデヒドにさらす非常に危険な行為であると言えるのです。

そのような時こそ、L-システインの摂取によってアセトアルデヒドの代謝をできるだけ早めることで、弱っている胃粘膜がアセトアルデヒドに暴露する時間をできる限り少なくしてあげるべきだと考えることができます。

少なくとも、L-システインによるアルコール代謝能力の増強を期待して、毎晩の晩酌のお酒の量を増やしたいがために、L-システインを毎日のように摂取するといった使い方だけは、絶対に避けるべきだと言えますね。

L-システインの注意すべき使い方、注意すべき人

また、毎晩の晩酌に限らず、よく外へ飲みに行く方が、まるで”二日酔い予防のドリンク剤”のように、飲みに行く度に L-システインを服用する…といった使い方も、かなり危険であると考えます。

なぜなら、外食が多い方はただでさえ生活習慣が乱れがちであり、たとえ現時点では糖尿病とは無縁であったとしても、そのような生活習慣を続けることで、将来糖尿病を発症する潜在的なリスクが高いと言えるからです。

L-システインの習慣的な摂取は、糖尿病発症の潜在的リスクを底上げする可能性があるばかりでなく、お酒が好きな人であればなおさら、Lシステインの効果を期待して、ついつい飲酒量を増やしてしまう危険性もはらんでいると言えるのではないでしょうか。

もちろん既に糖尿病を発症していたり、予備軍に属する方などは、L-システインの服用は避けた方が良いのは言うまでもありません。

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Category : 胃痛・胃の不快感・胸焼け