尿1滴でがんを早期発見!寄生虫の線虫で精度95%以上のがん検診実現へ

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寄生虫である体長1ミリほどの”線虫”のある習性を利用して、たった1滴の尿から高精度にがんの有無を判別することに成功しました。この検査技術が実用化されれば、数百円程度の検尿検査で、様々ながんを早期に発見することが可能となりそうです。

がん検診の受診率について

がんは何と言っても早期発見、早期治療が完治への鍵になります。そこで有効となるのが”がん検診”なのですが、実は我が国のがん検診受診率は、まだまだ低い状況にあるようです。

我が国では、がん検診の受診率は3年に1度調査されており、過去に行われた3回(2007年、2010年、2013年)のがん検診受診率の推移は次の通りです。

日本のがん検診受診率推移

がん検診の重要性が認知され、年々その受診率を伸ばしていることがわかります。特に男性の受診率の伸びが大きく、50%に達する勢いですね。しかし、これで喜んでいてはいけません。先進欧米諸国は以前より7割以上の受診率を維持しているのですから・・・

乳がん検診と子宮がん検診の受診率の国際比較

【参考】 上図は2005年~2007と少し古いデータですが、乳がん検診と子宮がん検診の受診率の国際比較です。

日本のがん検診受診率が低い理由

では、医療先進国であり、がんの恐ろしさ、早期発見の重要性が広く認知されている我が国において、なぜがん検診の受診率が低いのでしょうか?その理由は、次のような”がん検診にまつわる4つの憂鬱”が存在するからだと考えられています。

  • 費用が高い
  • 時間がかかる
  • 検査に痛みを伴う(※)
  • がんの種類ごとに異なる検査が必要

胃がんの内視鏡検査や乳がんのマンモグラフィーなど

”がん検診の憂鬱”を一掃しうる大発見

今回、これらの”がん検診の4つの憂鬱”を一掃する可能性を秘めた大発見が九州大などの研究チームによりなされました。

サバやサケ、タラなどの寄生虫”アニサキス”としてよく知られ、生物実験などでごく一般的に用いられている、体長1ミリほどの”線虫”のある習性を利用して、たった1滴の尿から高精度にがんの有無を判別することに成功したのです。

この新しい検査技術が確立すれば、検体の採取が容易な尿から、様々な種類のがんを、しかも従来のがん検診では見つけにくかった早期がんまで発見できる可能性が出てきました。

また診断に要する時間も約1時間半ほどで、検査費用も、たったの100円~数百円程度で済むようですので、まさに前述した4つの憂鬱を一掃する可能性を秘めていると言っても過言ではありませんね。

がん検診の4つの憂鬱を一掃

犬と同等の嗅覚を備えた線虫の犬にはないメリット

もともと臨床現場では、がん患者には特有の”におい”があることが知られており、鋭い嗅覚を備えた犬をがん診断に利用しようという「がん探知犬」の研究が行われていました。

ところが、がん探知犬による診断は犬の集中力に左右されるため、1日に調べることのできる検体が限られる他、探知犬の育成には多大な時間と費用がかかることから、現時点で実用化は難しい状況にあるようです。

C.エレガンス(カエノラブディティス・エレガンス)の画像

これに対して、今回スポットライトを浴びることになった線虫は、「C.エレガンスカエノラブディティス・エレガンス)」と呼ばれる線虫で、体長は約1ミリ程度の透明の体をもち、多細胞生物として最初に全ゲノム配列が解読された生物です。

「C.エレガンス」は犬と同程度の優れた嗅覚を備え、好きな”におい”に集まり、嫌いな”におい”から逃げる習性があるために反応を調べやすく、飼育も容易で、これまでにも生物実験で広く用いられていました。

研究の経緯とその診断精度について

九州大らの研究チームは、サバに当たった患者の治療で、体内に寄生した線虫アニサキスを手術で取り除こうとした際、アニサキスが未発見の胃がん部分に食い付いていたことを発見。アニサキスが何らかの成分にひきよせられているのではないかとの考えの下、この研究がスタートしたのだとか。

その後の研究で、線虫ががん細胞に特有の分泌物の匂いに反応することが判明し、血液よりも診断が容易である尿に対する反応を調べるべく、動物実験で広く用いられている、ごく一般的な線虫「C.エレガンス」を使って、様々な種類のがん患者の尿にどう反応を示すかを確認しました。

実験の概要とその注目すべき結果は次の通りです。

シャーレに置いた線虫に、がん患者の尿と健康な人の尿242人分を数滴垂らし、それぞれの検体に線虫が示す反応を調べた。その結果、線虫はがん患者24人の尿のうち23人分(95.8%)に近づき、健康な人の尿218人分では207人分(95.0%)で遠ざかった。

24人のがん患者のうち、12例はがんの進行度を示すステージが「0」と「1」の早期がんであることから、線虫は従来のがん検診では見つけにくかった早期がんを発見できる可能性もあることがわかった。

つまり、線虫ががん患者の尿中に含まれるがん細胞の分泌物のにおいを、95.8%の高精度で”好きなにおい”と認識してそこに集まっただけでなく、健常者の尿を95.0%の精度で”嫌いなにおい”として認識し、そこから逃げ出すことがわかったのです。

また、この実験では胃がんや食道がん、前立腺がん、さらには早期発見が難しいすい臓がんなども含む数十種類のがん患者の尿が用いられていましたが、線虫はそれら全てのがん種に反応を示しただけでなく、従来のがん検診では見つけることが難しかった、ステージ0やステージ1に属する早期がんも判別できる可能性が高いことがわかりました。

ちなみに、血液を調べる従来の腫瘍マーカーで今回の実験に参加したがん患者を検査した結果、がんと正確に診断できた確率は16.2~25%に過ぎなかったのだとか。線虫の診断精度の高さには驚くべきものがありますね。

この検査技術が実用化されれば…

研究グループは、2019年までの実用化を目標に、日立製作所などと共同研究をスタートさせています。既に、特定のがんにだけに反応する線虫の作製にも成功しており、将来的には、がんの種類の特定も可能になるのだとか。

がんは早期に発見し、早期に叩くことができれば、何ら恐れる病気ではありません。もしも、この検査技術が実用化されれば、たった100円~数百円程度の検査費用の負担と尿の提出だけという気軽さで、これまでは見つけることが難しかった早期がんの発見が可能になるのです。

様々な環境問題を抱える上に、ストレスの多い現代社会において、がんの発症を完全に防ぐことは難しいと言えます。しかし、前述の”がん検診の4つの憂鬱”を一掃し、誰もが気軽に、より短いスパンでがん検診を定期的に受診するようになれば、がんによる死亡者数は激減し、さらには医療費の大幅な削減に繋がることでしょう。

たった1ミリの寄生虫が、人類のがんに対する脅威を取り除いてくれる日は、そう遠くないようです。一日も早い実用化に期待しましょう!

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Category : 健康・医学の最新情報